第12回 KINOTAYO 現代日本映画祭、今年のみどころ。

『アズミ・ハルコは行方不明』

秋深まる11月。日本の「文化の日」と足並みを揃えるように、第12回キノタヨ映画祭(KINOTAYOは「金の太陽」の意)が訪れる。今年は11月2日(木)、パリ日本文化会館のオープニング上映(19h-『息の跡』小森はるか監督)を皮切りに、現代日本映画の旬を紹介、地方上映も実施する。日本文化が好き、あるいはこれから発見したいフランス人はもちろん、日本映画に飢えた在仏日本人の心を満たす絶好の機会。選考委員を務めるディミトリ・イアンニさんに、今年の映画祭について話を伺った。

「キノタヨ映画祭」をよく知らない方に、簡単にご紹介ください。

日本は世界に誇る映画大国。しかし海外の映画祭で一度に上映される数は、せいぜい3、4本と決して多くはない。そこで質の高い邦画からフランス未公開作品を選び、デジタル上映で紹介したいと考えました。とりわけ邦画の多様性を見せたいと願っています。商業映画から作家の映画、ドキュメンタリー、アニメまで、この映画祭では、幅広いジャンルの作品を鑑賞できます。コンペティション部門に十本選出し、それらの作品ごとに、パリ日本文化会館で2回、凱旋門近くのル・クラブ・ドゥ・レトワールで1回、計3回の上映を行います。

- 今年のセレクションの特徴は?

『愚行録』

昨年のコンペティションにはインディペンデント系の秀作が集まりました。今年は、李相日監督、渡辺謙主演の『怒り』のように商業的な作品もあれば、荻上直子監督『彼が本気で編むときは、』など、映画祭で賞賛された作品もあります。ジャンルもコメディ・ドラマ、ミステリー、スリラー、ラブストーリー、ドキュメンタリーと、多様性がさらに増した印象。20~30代の若手監督の作品が中心とはいえ、廣木隆一監督のようなベテランの秀作もあります。外国に住んだり、外国の映画学校で学んだ監督の作品も目立っています。石川慶監督はポーランドのウッチ映画大学出身。彼の『愚行録』は芸術的にも成功しており、長編第一作とは驚きです。外国で生活した監督の作品には、どこかで映画表現の違いが現れているかもしれません。

- コンペティション部門の監督は男性6人、女性4人。女性監督も多いですね。

『息の跡』

女性は西川美和監督、荻上直子監督、平柳敦子監督、そして小森はるか監督。小森監督のドキュメンタリー『息の跡』は、キノタヨのメンバーが、2年前の山形ドキュメンタリー映画祭で目をつけました。その後再編集され、今年日本で新作として劇場公開されたため、キノタヨでも紹介できるように。(注:キノタヨのコンペの規定に製作18ヶ月以内とあるため)。様々な上映会に赴き、情報網も広く張っています。『息の跡』は、津波の跡地に生きる陸前高田の生存者に寄り添った「記憶」についての作品。被写体との距離感が素晴らしく感動的な逸品です。

- 今年は新たに「KANATA 鏡の向こうに」と題したセレクションが加わりました。

『道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48』

映画祭で紹介できる作品はごく一部。そんなフラストレーションを少しでも解消するためのセクションです。コンペの10本に入ると地方でも巡回する可能性が高い。そのためフランス語の字幕は必至。しかし字幕を付ける作業には当然予算がかかります。しかしパリなら、たとえ英語字幕だけでも、受け入れられる文化的土壌がある。そこで「パリで一回のみ上映」と限定し、たとえやや先鋭的であっても、社会・文化的な観点から興味を持つ人がいると思われる質の高い作品を3本選びました。

例えば、アイドルグループのドキュメンタリー『道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48』は、日本文化に興味があるフランス人にも受け入れられるのでは。舩橋淳監督は原発事故後の福島を写したドキュメンタリー『フタバから遠く離れて』などで知られる俊才。彼がアイドルグループを追いかけるのは意外かもしれないが、まっさらな視線で、興味深いアイドル映画に仕上げています。

- パリはもちろんイル=ド=フランス地域圏の郊外、さらに地方上映まで行うのが、映画祭として画期的に見えます。

地方上映に関しては、第1回の映画祭から続けています。昨年の映画祭には約6千人の観客が来場しましたが、約4割が地方の観客。重要な割合ですよね。とりわけサン・マロやカンヌでの上映は反応がいい。コンペティションに選んだ作品は、3カ月期限の上映ビザを取得しており、パリの上映後は地方の映画館にDCP(デジタルシネマパッケージ)データを納品し、リレーのように見せていきます。上映する映画はコンペ作品の中から、映画館側に自由に選んでもらいます。

- 今年、地方では計8つの町で上映があります。他にも「キノタヨの映画を上映したい」という地方の町も多いのでは。

キノタヨ映画祭は、地方の町からの連絡を腕を広げて待っています。現地で日仏友好のアソシエーション(市民団体)などがあると、地元の映画館とをつなぐ橋渡しになってくれるから理想的です。フランスではまだ日本映画の新作を配給するのはリスクが高い。配給会社は良い作品があっても手をこまねいています。しかしキノタヨのシステムのおかげで、地方でも日本映画が見られるのです。ある意味でキノタヨが映画祭の形をとりながら、配給者の代わりになっているというわけです。(聞き手/林瑞絵)

キノタヨ日本現代映画祭の選考委員、ディミトリ・イアンニさん。

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第 12 回 KINOTAYO 現代日本映画祭
La festival du cinéma japonais contemporain KINOTAYO
日程の詳細は公式サイトでご確認をhttp://www.kinotayo.fr/

●パリ上映(市内2会場と、郊外) 

2017年11月2日(木)~11月10日(金) パリ日本文化会館
https://mcj.shop.secutix.com/selection/event/date?productId=1140914384(チケット予約)

2017年11月10日(金)~11月20日(月) ル・クラブ・ドゥ・レトワール
http://clubdeletoile.fr/programmation/(チケット予約/映画祭特別パスあり)

⚫︎郊外はサン=トゥアン=ロモーヌ、ロワシー=アン=フランス、アンギャン=レ=バン。

●地方上映は、2017年12月~2018年1月、カンヌ、ル・カネ、マルリ、サン・マロ、ポー、ストラス ブール、リヨン、シャンベリで開催。

 

コンペティション部門10作品

『彼らが本気で編むときは、』(監督:荻上直子/ドラマ)監督来場

『愚行録』(監督:石川慶/ミステリー、ドラマ)監督来場

『アズミ・ハルコは行方不明』(監督:松居大悟/ドラマ、サスペンス)

『オー・ルーシー!』(監督:平柳敦子/ドラマ、コメディ)

『パーフェクト・レボリューション』(監督:松本准平/ドラマ、ラブストーリー) 監督来場

『怒り』(監督:李相日/サスペンス、ドラマ)

『彼女の人生は間違いじゃない』(監督:廣木隆一/ドラマ)監督来場

『永い言い訳』(監督:西川美和/ドラマ)監督来場

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(監督:石井裕也/ドラマ、ラブストーリー)

『息の跡』(監督:小森はるか/ドキュメンタリー)監督来場


 

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