けん玉フランス共同設立者
アレクシ・ノエルさん
時折、意外なものにフランス人が熱中しているのに驚かされる。最近の例ではケン玉だ。リヨンを拠点とするケン玉の達人グループに出会い、彼らのカンフー映画さならがらのシャープなケン玉パフォーマンスに目を見張った。聞けば、パリでもセーヌ河岸でケン玉をやっている人たちがいたり、kendamaという名詞もフランス語に浸透しつつある。前出のケン玉グループの”親玉”格、アレクシ・ノエルさん(34)に話を聞いた。
2007年に初めて友人のケン玉を試したアレクシさん。翌日には日本から「大空」のケン玉を取り寄せた。スケートボードで滑る合間にケン玉を練習。デザインの勉強を終えた頃、シャンベリーでKendama France社を設立し輸入ケン玉を販売していたティエリー・マイヨさんと出会い、入社する。ふたりは2016年、そこから100kmほど北にあるジュラの森で伐り出されるトネリコやカバの木を使い、木工の伝統を受け継ぐ同地の玩具工房と組んで製造を始めた。今はプロフェッショナルのケン玉プレーヤー、ティムさんが会社に加わり自社ブランドNativ Kendamaのケン玉を開発・デザインしている。
ブランドによっては粘度の高い塗料を玉に塗布し、玉が剣や皿にひっかかりやすいものを作ったりもするが、Nativのものは玉の表面はサラっとした触感(その触感にも数タイプある)。そのほうが剣先で玉が回転するし、さまざまな技がやりやすいからだ。ローカルに事業を展開して長距離の運搬などの無駄を省き、環境に配慮しながら管理されている森林の木材を使う。工程にも目を配っていいものを作ろうという姿勢に、今のフランス社会の潮流を感じる。フルタイム社員はティムさんのみ。アレクシさんはグラフィックデザイナーの仕事を続けている。
ケン玉は、フランスのアンリ3世(16世紀)も幼少時に遊んでいたというビルボケ(Bilboquet:剣と玉だけで皿がないもの)を起源とするいうのが通説だ。それが江戸時代に日本に伝わり酒席の遊戯として流行り、明治時代に広島で大皿・小皿が両端についた皿胴を付け足して「日月ボール」としたのが今の形のケン玉の原型だといわれる(そんな事情からケン玉ワールドカップは2014年から広島で開催)。今のフランスでのケン玉ブームは2010年以降、アメリカやカナダから流入しスケートボード、スノーボードなどのプレーヤーの間に広まったものだという。世界大会ではアメリカが断然強く、そのなかにカナダ人、日本人が混ざっている。
「けん玉フランス」のチームは、規定の技で能力を競うよりは、「フリースタイル」を土俵とする。「無限の可能性がある」とアレクシさんが言うように、さまざまなトリック(技)やフォームを自分なりに自由に組み合わせ動きをつけたケン玉スタイルが彼らは好きなのだ。町の広場で、湖のほとりや林のなかで、ヌーヴォー・ケン玉とでも呼びたくなるようなケン玉パフォーマンスをする彼らのビデオが公式サイト*に投稿されている。
「集中力、運動神経を増進できるし、技がなかなかできなくても練習を続ける根気、やっとできたときの達成感も得られる。いいことばかりだよ」とアレクシさん。プロのティムさんは仲間との楽しい時間、人々が交流する媒介となるのもケン玉のいい点だという。ケン玉のことは短くKD(カデと発音)、プレーすることをride、slayなどと英語を使って表現するのも、なんとも21世紀のケン玉プレーヤーらしい。(集)
●けん玉フランスがEspace Japonにやってくる!
11月19日(火)-23日(土)
◎Pop-up Kendama-shop
けん玉フランスのブランドNativ Kendamaをはじめ、選りすぐりのケン玉を揃え一週間限定のケン玉ショップをオープンします。19日〜22日は毎日、アレクシさんとプロのプレーヤー、ティムさんのケン玉パフォーマンスとバトルも開催(17h30-18h30)!参加無料。
◎ケン玉作りと実技指導!
11月20日(水)16h-17h。
アレクシさんとケン玉組み立て教室。玉とボディの重さの均衡など構造のカギを理解したり、ケン玉の効用などの話。実技指導も!ケン玉は持ち帰り可。定員12名。1H/35€
予約 : www.espacejapon.com/activite/non-classe/atelier-kendama-du-20-11-2019/
Espace Japon :
12 rue de Nancy 75010 Tél.01 4700.7747
火〜金13h-19h / 土13h-18h