高校でいじめられ9月に自殺した生徒の親宛てに、ヴェルサイユ大学区本部が5月に送った脅迫まがいの書簡が9月16日にニュース専門局BFM-TVで公開され、物議をかもしている。アタル教育相は同日、「この手紙は恥だ!」と厳しく批判し、全大学区区長を招集し、いじめ問題に関する聞き取りを行うと発言した。その結果は10月半に出る予定だ。
自殺した高校生ニコラくん(15歳)はパリ郊外イヴリーヌ県の職業高校に通っていたが、昨年秋から2人の生徒からいじめを受けていた。3月に親と学校側の話し合いがあったものの、親は4月18日付の校長宛ての手紙のなかで、何ら対応策がとられていないと学校を批判、警察とヴェルサイユ大学区とに通報したことを明らかにし、何か起きたら学校を告訴すると強い態度をとった。
学校側は同20日付の返信で、教育指導担当が加害生徒に話をしたり、当事者間の仲裁を呼びかけるなどのフォローをしたが、仲裁はニコラくんが拒否し、そのあと親からの連絡がないのでいじめは収まったと理解していたと自己弁護。この手紙とは別に、ヴェルサイユ大学区が5月、親に充てた手紙では、学校を提訴すると脅した態度は許せないと批判。また、虚偽の告訴は禁固5年と罰金4万5000€だと刑法の条文を引き合いに出し、教育者に対して敬意を払い、建設的態度で接しないならしかるべき措置を取る、という脅迫的な文面だった。
ニコラくんはその後、転校したパリの高校で新学期を迎えたばかりの9月6日に自殺。まもなく、ヴェルサイユ検察局による自殺原因を探る捜査が開始された。問題の手紙が送られた当時のヴェルサイユ大学区区長シャルリーヌ・アヴネル氏は、手紙はニコラさんが通っていた学校の校長から大学部本部に、生徒の親から提訴された際の保護要請があったため、人事部が書いて送ったものだったと説明しつつも、手紙が不適切であることや、監督が行き届かなかったことを認め謝罪。ヴェルサイユ大学区に赴いたアタル教育相は、いじめを訴える親に対して、同様の不適切な手紙が55通送られていたことを発表した。
フランスでは5月にも13歳の女子中学生が自殺しており、ンディヤエ前教育相は、9月から保健師や教師から各中学に一人ずついじめ相談員を任命するとし、8月末には加害生徒のほうを転校させるといった 〈いじめ対策〉の政令が発布された。しかし、今回の大学区の書簡を見ると、学校や大学区が真剣に取り組んでいるようには到底思われない。
2年前に南仏で自殺した女子高校生 (当時15)の親は、娘がTikTokにいじめに悩んでいることを投稿した後、アルゴリズムによって表示された自殺関係の動画が娘を自殺に誘ったとして、TikTokを 「自殺挑発」「危険な状態にある人を助けない」罪状で今月8日に告訴した。英国では昨年9月、14歳少女の自殺を触発したとしてインスタグラムとピンタレストの責任を認める判決が下っている。(し)
♯NonAuHarcelement
「この新学期が、苦悩になってはいけません。今、100万人もの生徒が学校でいじめにあっています。… いじめにあったら、告発を。」(エリゼ宮サイトより)。
昨年9月、いじめの問題をうけてマクロン大統領も自らビデオを撮ってTikTokに投稿し、いじめ撲滅を訴えた。
それから一年が経った今でも、自ら命を絶つ若者が絶えない。
◉ いじめ相談フリーダイヤル
3020
いじめにあっている生徒、その家族、いじめを目撃した教師も電話で相談できるフリーダイヤル(希望者は匿名可)。相談者の同意があれば、教育省から各大学区や県に380人派遣されている〈いじめ相談員référent harcèlement〉に引き継いで解決策を探ることも。
月〜金 9h-20h、土は9h-18h。
3018
ネット、SNS上のいじめ(Cyberharcèlement)の問題に、心理学者、法学者、若者とデジタルの専門家らが対応するダイヤル。ネット上で受けた侮蔑的発言、自殺のすすめ、写真やビデオなど具体的な例を精査し、いじめだと認めた場合はSNS会社に投稿や投稿者を削除するよう促すほか、いじめにあった人の家族とともに対策を考えてゆく。毎日9h-23h。
これらの詳細はフランス教育省のサイトで
☞www.education.gouv.fr/