中学のフランス語と数学の授業で、学力によるグループ分け制度導入を定めた政令が3月17日付の官報に掲載された。
仏語・数学でクラスを「レベル・グループ」に分ける方針は、アタル前教育相が12月に打ち出していた。OECD生徒学習到達度調査(PISA)などで仏生徒の数学、読解力が低下した結果を受け、前教育相は仏語・数学の全体的なレベルアップを目指して強い対策を打ち出すとしていた。このレベル・グループ案には教員組合も含め教育界は反対しており、2月8日には高等教育評議会が満場一致で却下。アタル氏の後任ベルベ教育相はこの制度の導入に消極的な姿勢を見せていた。だが、アタル首相の意志は固く、折衷案の形で17日の政令発布になった模様だ。
同政令によると、中学1、2年生のクラスは今年9月の新学年から、3、4年生は来年9月から、年間36週のうち1~10週間、学力別グループで仏語・数学の授業を受けることになる。グループ構成は各自の必要性や進歩に応じて年度内でも見直される。
教育分野の研究者では、 「(支援を)必要とする生徒のグループ」に対して短期間の特別な指導をすることは効果があるが、「レベル・グループ」分けを長期間行うと悪影響が出るという意見が多く、学力の高いグループには有利かもしれないが、長期的には心理的な悪影響が出る恐れもあると指摘している。また、教員組合は教員不足である上、十分な協議がなされていないと反対している。
17日の官報には、アタル前教育相の意向を受けて、留年に関する政令も出された。留年は効果よりも悪影響のほうが大きいとして2014年のデクレで「例外的措置」とされ、留年か否かの判断は最終的には保護者に任されている。今後は、小学校では教師、中高では生徒、保護者、学校側の対話を経て校長が決め、保護者は決定から15日以内に異議を唱えることができるというふうに、以前の制度に戻ることになる。
さらに、年間3週間まで、有志の教師が行う長期休暇中の補習授業、中学4年時に行われる中学修了の全国試験「ブルヴェ」に不合格の生徒(全国平均で約10%)は2025年9月からは高校に進学できなくなり、そうした生徒のために「高1に進級するための準備学級」が少なくとも県に一つの高校に設置されることも盛り込まれた。制服の試験的導入と同様、アタル首相には伝統回帰志向や右派・保守派を取り込む政治的意図のようなものが強く感じられる。(し)