***
あわせてお読み下さい。
【特集】香水の都・グラースへ。〈1〉グラースで調香体験
***

古代エジプトから今日のグラースでの香水製造まで、技術や化学、人類学の側面から香水を理解できる博物館。白眉はマリー・アントワネットの香水瓶入り旅行セット (写真下)。1791年チュイルリー宮殿に監禁されていた王妃がアムステルダムにいる姉に贈るため、自分と同じものを注文したものだ。王妃自身が使っていたものはルーヴル美術館に所蔵されている。鏡と化粧品の小瓶、ショコラを淹れる道具とカップ、暖かい炭を入れて、布団を温めたあんかなどが入っている。
ミュージアムにはミニ温室と庭もあり、香水の原料として使われる植物の香りを嗅ぐことができたり、子ども向けの教室ではバスソルトづくり、オレンジの花のエッセンスを使ったプロヴァンスの菓子 「ナヴェット」づくりも体験できるので試してみたい。オーディオガイドで見学することもできるが、ガイド付き見学ツアーもある。90分みっちりのツアーだが、中身が濃くためになるのでおすすめだ。


◉ Musée International de la Parfumerie (MIP)
2 bd du Jeu de Ballon 06130 Grasse
Tél : 04.9705.5800 www.museesdegrasse.com
6€。館内ガイドツアーは9月〜6月は毎土曜 15h(90分)。
9月〜6月:10h–18h (7・8月:-19h)
休館:1/1、5/1、12/25、1〜3月と10〜12月の第1月曜日休館。(学校休暇中は、日曜をのぞいて毎日。11hと15h。7/7〜8/30は、日曜と祭日を除く毎日11hと15h。予約不要。ツアー開始時間15分前に受付Accueilへ。入場料+3€。
香水の原料となる植物栽培農家
ピエール・シアルラさんの花畑へ。

ピエール・シアルラさんは、香水の原料の植物栽培の家の4代目。花の需要が減り、親は畑を野菜畑にした時期もあったが、ピエールさんが盛り返し、5月のバラは1200株ほど栽培。グラースを代表するもう2つの花、ジャスミン、チュベローズも栽培する。
通常は5月から6月にかけて、バラの収穫で忙しい。4月後半に訪れた時は、あやめは満開だったが、日照時間の少なさでバラの蕾は数える程度。「トランプ大統領の関税問題よりも天候が心配」と言うのが印象的だった。花が咲くと、斜面にひろがる畑の上にある家のテラスまで香りが漂ってくるという。収穫はすべて手摘みだ。バラは、お母さんとふたりで収穫するという。
アンフルラージュ*(冷浸法。下記参照)や、溶剤抽出など、花の香りを抽出する技術の進歩とともに、原材料となる花や植物の需要が高まり、グラースの花栽培は1850年から1950年、最盛期を迎えた。しかしその後、合成香料の登場や、生産地の海外移転、コート・ダジュールの宅地開発の波で多くの農家が土地を手放し、1950年に5000軒あった農家は数軒にまで減ってしまう。グラースの周辺にある畑も、それほど大きくなく、住宅と畑が混在するような状態で、ピエールさんの畑も大きな車道に区切られている。農地と宅地とのせめぎ合いが今も続いているのだ。

それが、80年代になってシャネルがグラースの花生産者と契約を結んだのを機に、他のブランドも良質の花を求めてグラースに戻ってくるようになった。2006年には、地元の栽培者を保護し、新規参入者も支援する団体〈グラースの卓越した花-Les Fleurs d’Exception du Pays de Grasse〉協会が発足。また、地元グラースでつくられる 「アブソリュ(absolue)**」を保護する原産地の地理的表示 (IG)ラベルが設けられた。植物栽培、加工、調香、製造、販売までの関連業者が結束し、一時衰弱したグラースでの香水の原料植物の栽培を復活させたことは、香水産業そのものを保護することにつながった。今は40軒ほどの栽培農家がある。
**植物を揮発性有機溶剤に浸して香りの成分を摘出した後、液体を蒸発させると、香りが凝縮されたワックス状の 「コンクレ」が得られる。それをアルコールと混ぜた後で濾過すると、さらに香りが凝縮された 「アブソリュ」になる。
* Enfleurage(アンフルラージュ)

香りの抽出技術「enfleurage (冷浸法)」自体は古代からあったが、このような木のケースを使う冷浸法は1750年ころグラースで開発された。ケース内に牛脂や豚脂を入れておき、そこに花を入れて、脂に香りを吸収させる。新しい花に数回入れ替え、脂に十分香りが移ったらエタノールと混ぜ、香気成分と脂肪を分離させる。ジャスミンやチューベローズなどデリケートで高温に弱い花にはこの技術が用いられた。モリナール社の香水ミュージアムで。
グラースの花の祭

◉バラ祭 Expo Rose 2025
2025年 5/8(金)〜 5/11(月)
グラース旧市街で行われる国際バラ博、ブーケコンクール、苗や種、園芸道具やバラを使った食・化粧品・キャンドル・石鹸販売。泉・噴水のバラ装飾など。画家フラゴナールの館も修復を終えてオープン予定。
入場料 : 5€/12歳未満 3€
詳細と入場チケット購入はこちらから。
◉ジャスミン祭 Fête du Jasmin
2025年 8/1(金)〜8/3(日)
毎年8月第一週末はジャスミン祭が開催される。土曜の晩は花パレードも。
詳細はこちらから→ www.ville-grasse.fr/fete-du-jasmin-2/

Musée International de la Parfumerie (MIP)
Adresse : 2 bd du Jeu de Ballon , Grasse , FranceTEL : 04.9705.5800
URL : https://www.museesdegrasse.com/
入場料:6€。館内ガイドツアーは9月〜6月は毎土曜 15h(90分)。 9月〜6月:10h–18h (7・8月:-19h) 休館:1/1、5/1、12/25、1〜3月と10〜12月の第1月曜日休館。(学校休暇中は、日曜をのぞいて毎日。11hと15h。7/7〜8/30は、日曜と祭日を除く毎日11hと15h。予約不要。ツアー開始時間15分前に受付Accueilへ。入場料+3€。
