Goulash de porc hongroise
もう10年以上前になるが、ハンガリーで夏のバカンスをすごした。そのとき気づいたのは、この国の料理にはピーマン(ハンガリー語でpaprika)が欠かせないということだ。たとえばブダペストの朝市に出かけてみると、色さまざま、辛ささまざまのピーマンを売っている一画がある。赤ピーマンを乾燥させて粉末にしたパプリカ粉もひんぱんに使われる。その代表的な料理がグーラッシュという煮込みだ。
レストランで何度かグーラッシュを味わう機会があったのだが、肉は牛肉だったり豚肉だったり、と店次第。今回のレシピは豚肉にしてみた。脂が適度に混じっている背肉échineがいい。3センチくらいの厚さに2枚、約800グラムを、骨ごと切り分けてもらう。骨を切りはずし(面倒なら肉屋に頼む)、角切りにする。玉ネギは薄切り、赤ピーマンは1センチ幅くらいに切り分ける。ニンニクは押しつぶす。
ココット鍋にオリーブ油をたっぷりとって肉を加え、中強火でいためていき、まんべんなく焼き色がついたら玉ネギを加え、中火でしばらくいためる。缶詰のトマト、濃縮トマト、パプリカ粉、ニンニクを加え、肉がひたひたになるように水を足す。ブイヨンキューブも入れ、沸騰してきたら、軽く塩、多めにコショウし、ふたをし、弱火にし、2時間ほど肉がすっかり柔らかくなるまで煮込んでいく。ピーマンの甘みで煮汁が鍋の底にくっつきやすいので、ときどきへらでかき混ぜることを忘れないようにしたい。最後に塩、コショウで味を調え、パセリあるいはコリアンダーの葉のみじん切りを散らせばでき上がり。
付け合わせは、ハンガリーではゆでたジャガイモやノケドリという柔らかなショートパスタだった。先日、友人たちを招いたときに、市販のspaetzle(シュペッツレ)というアルザス産卵入りパスタをバターいためしてから添えてみたら、大好評だった。ワインはロワール産の赤、サン・ニコラ・ド・ブルグイユにしたのだが、申し分ないとり合わせになった。(真)
【材料4人分】
豚の背肉800g、玉ネギ3個、赤ピーマン1、2個、ニンニク3片、トマトの缶詰chair de tomates 400g、濃縮トマト大さじ2杯、パプリカ粉大さじ2、3杯、オリーブ油、チキンのブイヨンキューブ1個、パセリあるいはコリアンダーの葉適量、塩、コショウ
*煮直すとさらにおいしくなるので、二人でも4人分つくりたい。
Poivron ピーマン
ピーマンは南仏料理に欠かせない野菜の一つ。ラタトゥイユやウサギ肉の南仏風も赤ピーマンのうまみが決め手だし、ひき肉を詰めたファルシも定番。フランス南西部、バスク地方の料理、たとえばピペラードや鶏肉のバスク風もピーマンが主役だ。熟すに従って、緑から黄、そして赤と色が変わっていき、甘みが出てくる。フランスのピーマンはとにかく大型だが、味自体はあまり変わらないのでご心配なく。
Paprika
よく熟した赤ピーマンを粉にしたのがパプリカで、濃いオレンジ色をしている。フランスで売られているもののほとんどは辛みなしのpaprika doux。軽くいぶしたような香りと甘さがある。フレッシュチーズ、アボカドのワカモレ、ローストした野菜などに振りかければいろどりも美しい。鶏肉のトマト煮や牛肉のワイン煮の隠し味にもいい。グーラッシュのように大量に使うときは、100グラムの袋入り (4€前後)などを買ってくるとお徳。
Schnitzel(シュニッツェル : カツレツ)
シュニッツェルは、子牛肉などをミートハンマーやめん棒でたたいて薄くし、塩、コショウしてから細かいパン粉をつけ、多めのバターや油で焼いたもの。オーストリアのウイーン風が名高いが、ドイツでもイタリアでもつくられているし、オーストリアのお隣りハンガリーでも人気料理だ。庶民的な店で食べたシュニッツェルは、巨大で皿からはみ出しそうだったが、子牛肉の薄かったこと!でもうまかったなあ。そして付け合わせはポテトサラダやフライドポテトだった。