Fricadelle
フランス北部のオー・ド・フランス地方やベルギーを旅した人は、露店のフリット屋で、フリットと一緒にフリカデルと呼ばれるソーセージを食べたことがあるだろう。揚げたての皮はプツンと歯ごたえがあり、中の身はやわらか…。その身は何からできているのか?
最近は鶏肉が多いときくが、ほかには?とたずねると、現地の人も首をかしげる。ぼくの持っているベルギー料理の本によると、もともとは子牛肉を使っていたらしい。
子牛肉は、筋や脂身がない、内また肉noixを400グラム。脂身もほしいので豚の背肉 échineも同量買ってくる。子牛肉は小さく切り分ける。豚肉は骨をとってからやはり小さく切り分ける。どちらもフードプロセッサーできめ細かなミンチ状にし、ボウルにとる。
エシャロットはみじんに切るのだが、それが大きめだと調理中にフリカデルが割れたりするので、できるだけ細かくです。卵2個のうち1個は黄身と白身に分け、その白身は使わない。
ボウルのミンチに、エシャロット、卵、きめの細かいパン粉chapelure fineを加える。塩、コショウし、フリカデルはナツメグnoix de muscadeの香りが決め手なので、多めにおろし入れる。以上を丹念に練り合わせるのだが、手を使ってやるのが一番だ。ボウルごとラップでおおって1時間ほど冷蔵庫に入れておく。
1時間たったら冷蔵庫から出し、8等分したものを手で転がしながら、長さ18センチ、直径3センチほどのソーセージ形にする。ソーセージといっても腸には詰めません。大きめのフライパンに油を多めにとり、このソーセージにまんべんなく焼き色がつくまでいため、オーブン皿に並べていく。
このへんで、フリットやジャガイモのソテー、ゆでサヤインゲンなどの付け合わせを準備する。
オーブンを180度に合わせて点火。熱くなったら、芯まで火が通るようにフリカデルを入れ、15分ほど待てば、上品な味わいのソーセージのでき上がり。マスタードをたっぷりつけて味わう。(真)
4人分:子牛肉noix 400g、豚肉échine 400g、エシャロット2個、卵2個、パン粉chapelure fine大さじ3、4杯、油 (落花生油huile d’arachide)、ナツメグ、塩、コショウ
Viande hâchée
ひき肉viande hâchéeが肉屋の店頭に見あたらないのは、ひき肉は鮮度が保ちにくく、傷みやすいからだ。たとえば「400g de viande hâchée s’il vous plait」と頼むと、客の目の前で、赤身の牛肉 trancheなど適量を切り分け、低温に保たれているひき肉機でひいてくれる。steak hâchéはハンバーグのことだが、「4 steaks hâchés svp」と注文すると、型に入れてハンバーグ形にしてくれる。
スーパーでもすでにハンバーグ形のひき肉が売られている。ふつうのフランス人は、それをそのままフライパンで焼いて、塩、コショウ、ということがほとんどだからだ。ひき肉に、玉ネギや卵黄、ミルクで柔らかくした食パンなどを混ぜ入れたハンバーグの方がおいしいのにね。言い忘れたが、フランスの肉屋では豚肉はひいてくれないから、中華料理などで豚のひき肉が必要なときは、自分でフードプロセッサーでひくか、中華食品店の精肉部に出かけて行くことになる。
Qu’est-ce qu’on trouve dans une fricadelle
『Bienvenue chez les Ch’tis』という傑作コメディーがあった。南仏から北の町ベルグの郵便局に転勤してきたフィリップ (カド・メラッドが好演)が地元の同僚に連れられて、露店のフリット屋で初めてフリカデルを味わう。ひと口ほおばって 「うまいなあ! なにが入ってるんだい」ときくと、「みんな知ってるけど、言っちゃいけないんだよ」 という答えがかえってくる。
現在の工場産フリカデルの原料は、鶏肉のあまり売れそうにないところが主で、ほかには牛肉や豚肉のあまり上等でないところ。脂身を増やすために鶏の皮まで入っているという人もいる。
子牛肉なんて入れたら、フリット付きで5ユーロなどという価格はキープできない。ここは野暮な疑問はいだかずに、フリットといっしょにマヨネーズやマスタードをつけながらパクつくしかない。でも、うまい!