Fêtes et célébrations flamandes – Brueghel, Rubens, Jordaens…
リールでは文化イベント《リール3000》を開催中だ。今年のテーマは 「Fiesta 祝祭」で、その一環として開かれている美術展のなかでも見逃せないのが、リール美術館の「フランドルの祝祭」展だ。

「フランドルの祭りには、人々の融合という意味合いがある」と言うのはリール市の文化担当者だ。16〜17世紀、フランドルを含む当時のネーデルラントでは、スペインから独立するため1568年から1648年まで続いた80年戦争で、国土も人々の心も疲弊した。略奪、殺戮で荒れた町や村では、戦乱が収まった時に行う祭りが社会の再生につながった。
この時代、フランドルでは多くの祭りが行われたという。「祭りは民俗的な観点から語られることが多いが、歴史的、政治的、社会的な観点から捉えるのが本展の目的」と前述の市の担当者は説明する。
展覧会の冒頭は薄暗い。 「アントウェルペンでのスペインの猛威」では、町にスペインの兵士が雪崩込み、虐殺された人々が道路に山積みになっている場面が描かれている(トップの画像)。17世紀は戦争と祝祭が至るところであり、兵力が弱まった時に村人たちは兵士を追い出して祭りをした。この時代、戦争だけでなく、飢饉やペストにも襲われた。祭りは死を免れた人々の喜びの表れだ。
当時の絵を見ると、農村の祭りと都市の祭りが違うことがわかる。都市では、戦争が終わった後、新しい統治者が町に入場するときに祝祭が行われた。住民が初めて見る人を統治者として認識する重要な機会だった。祝祭のために山車や巨大な人形、その時だけ使う入場門を制作する大道具・小道具の職人集団がいた。祭り専門職だったというから、どれほど多くの祭りがあったのかが想像できる。

ピーテル・パウル・ルーベンスも1635年、スペイン領ネーデルラント総督のアントウェルペン赴任の祝典に際して装飾の注文を受けた。会場ではルーベンスがデザインした豪華な凱旋の山車のデッサンがみられる。入場門に描かれた絵の多くは残っていないが、破棄を免れたされたものの中には、ルーベンスを模写した高さ2メートル以上の巨大な絵画がある。
巨人の頭部は良い状態で保存されている。今もフランドルの祭りに登場する巨大な人形のルーツだが、顔の描き方は現代的で、とても数百年前のものとは思えない。都市では仮装した人々が町を練り歩く華やかな祭りだった。職能集団の祭りでは、職業に関係のある動物の巨大なオブジェが祭りを彩った。

(16世紀)Pieter Coecke van Aelst Museum aan de Stroom (MAS) Tête du géant Druon Antigone 1534-1535 VM.2004.1021.00*, Collection Ville d’Anvers – MAS
農村部での祝祭「ケルメス」

Musées royaux des Beaux-Arts de Belgique, Bruxelles © Musées royaux des Beaux-Arts de Belgique, Bruxelles /photo : J. Geleyns – Art Photography
かたや、「ケルメス」と呼ばれる農村の祭りは素朴だ。婚礼の祝祭では清潔だが質素な格好の人々が外で踊っている。会場で向かい合わせに展示されているヤン・ブリューゲル(父)の「婚礼の踊り」とその兄のピーテル・ブリューゲル(子)の「戸外での婚礼の踊り、または新婚夫婦の踊り」は、約10年の間隔を隔てて描かれたものだが、同じ場面を鏡に映して描いたかと思えるほどよく似ている。農村では、人々が異性を口説いたり、酔っ払って寝転んでいたりと、欲望をストレートに出している様子が面白い。
会場の最後は屋内での祝祭の紹介だ。ヤーコブ・ヨルダーンスの代表作の一つ「酒を飲む王様」では、狭い場所でエピファニー(公現祭)を祝う大勢の人々が描かれている。左に飲みすぎて吐く男、右に子供の尻を拭く女がおり、宗教の祝祭なのに描かれた人々はなんとも俗っぽい。ハンス・フランケンは、クレープ、ゴーフルといった今も食されているお菓子を静物画の中に描き、フランドルの雰囲気を表した。会場の中央に当時を彷彿させる食卓が置かれ、観客に臨場感を味わわせている。11/30まで。
Lille 3000とは
欧州連合には、加盟国がそれぞれ 「欧州文化首都」 を1都市選び、そこで1年間、文化芸術の催しを開催するという事業がある。1985年、ギリシャの文化大臣の発案で、各地域の特色ある文化を人々が共に祝福し、相互理解を深めることを目的に設定された。選ばれると文化の活性化だけでなく、町のイメージアップ、それによる経済的効果などもあるとされる。リールは 2004年に選ばれ2006年から「リール3000」として、町をあげての文化イベントを続けている。

▶ Palais des beaux-arts de Lille: (リール美術館)
Place de la République 59000 Lille

Palais des beaux-arts de Lille: (リール美術館)
Adresse : Place de la République, 59000 Lille , Franceアクセス : République Beaux Arts(Lille市)
URL : https://pba.lille.fr/FETES-ET-CELEBRATIONS-FLAMANDES-BRUEGHEL-RUBENS-JORDAENS
SNCFパリ北駅からLille Flandres 駅、またはLille Europe駅までTGVで1時間。駅から徒歩10-15分。または地下鉄1号線 République Beaux Arts下車。火休、月:14h-18h 水-日:10h-18h 入場料:8€ / 16h30以降5€。
