Fenêtre sur le Japon
2021年にスタートした「Fenêtre sur le Japon – 日本への窓ドキュメンタリー映画祭」は今年で2回目。現代の日本社会を見通す窓となるような映画祭で、2年に一度、秋のパリで開催される。今年は11月17日(金)と18日(土)の2日間。フランスで上映の機会が少ない貴重な秀作5作品が、事前予約不要&無料鑑賞できるのが嬉しい。
11月17日(金)
初日はイナルコ(フランス国立東洋言語文化研究所)のオディトリウムを会場に、朝から夜まで3本を上映。トップバッターは9 h15から、日向史有監督の『東京クルド』。難民申請を続ける在日のクルド人青年を5年に渡って取材した作品だ。14hからは「部落差別」の問題を歴史から掘り起こす204分の大作、満若勇咲監督『私のはなし 部落のはなし』。大島渚監督の次男で、ドキュメンタリー作家として活躍する大島新監督がプロデューサーを務め、第96回キネマ旬報ベスト・テン 文化映画作品賞も受賞した話題作。19hからは青柳拓監督の『東京自転車節』。緊急事態宣言下にある東京を、監督自らが自転車配達員として働いた記録である。
11/18(土)
2日目は会場を移し、パリ・シテ大学講堂で開催。10hからは政治と教育の危険な関係に迫る斉加尚代監督の『教育と愛国』。毎日放送(MBS)のテレビドキュメンタリーから派生した作品で、優れたジャーナリズム活動を表彰する「JCJ賞」大賞など数々の賞に輝いた秀作だ。15hからは在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督の『スープとイデオロギー』。かつては朝鮮総連の活動家、現在は認知症を抱える監督のオモニ(母)にカメラを向けた作品で、昨年のキノタヨ映画祭ではグランプリを受賞している。
プログラム全体を眺めると、社会的弱者やマイノリティーの存在に光を当てた作品が集まったと言えそう。全ての作品には上映後に討論会が付く。社会学的かつ、フィールドワーク調査に基づく民俗誌学的アプローチの作品からは、メインスリームメディアが取りこぼしがちな現代の日本社会の素顔が見えてくるだろう。当日は活発な意見交換を期待したい。
SOIRÉES 100% DOC
なお、Fenêtre sur le Japon はパリの各所で不定期上映会も実施。11月14日(火)にはパリ市の映像施設フォーラム・デ・ジマージュで、山本容子監督『竪川に生きる』の有料上映会が。五輪前夜で野宿生活者の強制排除が進む東京を背景に、空き缶集めで生計を立てる日雇い労働者に迫った作品である。貧困層の生活を美化したように見えなくもない話題の『Perfect days』(米アカデミー賞国際長編映画賞日本代表のヴェンダース作品)より、私たちが見ないといけないのは実はこういう作品かもとふと思う。本作も監督を招いた討論会が実施予定だ。(瑞)
会場 Forum des images (Westfield Forum des Halles内、2 rue du cinéma, Paris 1er)
20h30「竪川に生きる」(Vivre à Tatekawa) 山本容子監督
www.forumdesimages.fr/les-programmes/soirees-100pc-doc-2023-2024/vivre-a-tatekawa
Fenêtre sur le Japon
日本への窓・ドキュメンタリー映画祭 2023 プログラム
11/17(金)
会場:Auditorium de l’INALCO (65 rue des Grands Moulins, Paris 13e)
– 9h15-12h 「東京クルド」日向史有監督 (vost anglais, 103 min.).
– 14h-18h30 「私のはなし 部落のはなし」満若勇咲監督 (vost anglais, 204 min.)
– 19h-21h30 「東京自転車節」青柳拓監督 (vost anglais, 93 min.)
11/18 (土)
会場 – Amphithéâtre Buffon du campus des Grands Moulins de l’Université Paris Cité (au RdC du bâtiment Buffon – l’entrée se trouve au 15 rue Hélène Brion)
10h-12h45「教育と愛国」斉加尚代監督 (vost anglais, 107 min.)
15h-18h00「スープとイデオロギー」ヤン・ヨンヒ監督 (vost français, 118 min.)
17h-18h30 審査団による選考
18h30-19h30 授賞式、フェスティバル・クロージング
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