オルレアンで日本美術展を開催中だ。展示品の中で注目すべきは浮世絵。
吉原の優美な花魁の世界には、華やかさとは裏腹の、貧しい女郎たちの生活があった。フランスでは、ジャポニズムの視点から浮世絵展が開催されることがあるが、題材の社会的背景を考察し、当時の人々の生活を浮き上がらせた展覧会はさほど多くない。
会場である歴史考古学博物館は、1550年建築のルネサンス時代の建物だ。弁護士フィリップ・カビュのために建てられたため、「オテル・カビュ」とも呼ばれる。ガロ・ロマン時代からの歴史的出土品やジャンヌ・ダルクに関連した展示品が常設会場で見られる。この地上階会場で、日本の陶磁器や浮世絵を展示している。
浮世絵は、1896年に来日したオルレアン出身の建築家・技術者のルイ・ギヨーム(1855-1923)が東京で買い集めたものだ。1901年にオルレアン美術館に19点を寄付したが、長い間一般の目に触れることはなかった。今回、その中から15点を展示している。

ギヨーム・コレクションの主な浮世絵は、江戸末期の浮世絵師、歌川国芳(1797-1861)の作品である。破天荒な構図、色使い、ユーモアや風刺の効いた作風で近年再評価が高まっている。国芳には、忠臣蔵の四十七士を描いた「誠忠義士伝」があるが、その続編として、四十七士の周辺の人々を取り上げた「誠忠義心伝」を制作した。本展で展示されているのはこの「義心伝」に出てくる、義士の妻や妹などの女性たちだ。女性の名前と説明が書き添えられている。フランスの浮世絵展で滅多に見ることができない貴重な作品群だ。ギヨームが集めた浮世絵には女性像が多いことから考えると、四十七士のことは知らず、単なる美人画として購入したのかもしれない。

歌川一門の作品に集中しているのもギヨーム・コレクションの特徴だ。歌川国貞(1786-1865)の「東八景の内 花に埋葵坂の暮雪」(画像下)は、歌舞伎役者、中村歌右衛門の娘姿を描いたものだが、日本の複数の美術館にある同名の浮世絵とは役者の仕草や着物の柄が異なっており、こちらも希少価値がある。

同じく国貞の描いた吉原の花魁の絵画像3.2は、着物の豪華さで目を引くが、会場では「はかなき浮世」の意味を掘り下げて、吉原の女郎の過酷な日常も紹介している。食事は貧しく、1日1食や2食はザラだった。7歳くらいで家族から吉原に売られ、12歳くらいで女中になり、衣食住つきでも客は拒めず、仕事はきつく、平均寿命は約20歳だったという。

その他、北斎が描いた妖怪「鎧口」画像2.a、国芳の弟子で、明治時代まで生きた月岡芳年(1839-92。会場では歌川芳年と記載)が舌切り雀の民話を題材にして描いた浮世絵など、ユーモラスな作品も揃っている。

扇子の骨の先の部分に美人画15枚が描かれた扇子、提灯を持つ麻衣子の足元に犬がまとわりつく陶器の置物など、珍しいオブジェにも事欠かない。江戸末期の日本の美術を知る上で、見る価値がある展覧会だ。(羽)3/8まで


Hôtel Cabu - Musée d'Histoire et d'Archéologie d'Orléans
Adresse : 1 square Abbé Desnoyers, Orléans , FranceTEL : 02 38 79 25 60
アクセス : 国鉄SNCFオルレアン駅からは徒歩で15分ほど
URL : https://museesorleans.fr/
月休、10/1 - 4/30 : 13h-18h。 8€/4€(同日なら市内の他の美術館にも入場可能)。毎月第一日曜日は無料。


