Exposition “Robert Capa, Icônes” aux Franciscaines
報道写真家ロバート・キャパ(1913-54)の写真展がノルマンディー地方ドーヴィルで始まった。キャパの伝記*を著したミシェル・ルフェーヴル氏がキュレーションにあたり、150点の当時のプリント、カメラやタイプライターなどの仕事道具、当時の新聞の切り抜きなどで構成されている。
*『ロバート・キャパ』ベルナール・ルブラン、ミシェル・ルフェーヴル著(太田佐絵子訳、原書房、2013年)
展覧会はキャパが第二次大戦後、アメリカの旅行雑誌「Holidays」*のために取材したドーヴィルの写真から始まる。1951年8月、キャパはドーヴィルに2週間滞在しながら文章と写真の滞在記を綴った。富裕層が集まる避暑地ドーヴィルでのファッションショー、競馬場、ナイトクラブ…。ドーヴィル以外の地でも、ヘミングウェイ、スタインベックらの肖像写真、南仏ジュアン・レ・パンで戯れるピカソとフランソワーズ・ジローの写真も撮っている。パリで出会って恋仲になったイングリッド・バーグマンはキャパをハリウッドに連れて行き、それからはスターたちが出演する映画のスチール写真なども撮った。再び戦場へ戻るまでの、どこかバカンスのような期間だ。
しかし、展示のメインはやはり報道写真。世界的な名声をもたらした1936年からのスペイン戦争の写真、日中戦争、第二次世界大戦、イスラエル建国と1948年第一次中東戦争、インドシナ戦争で命を落とす54年まで、キャパは5つの戦争を取材した。第二次世界大戦中の1944年6月6日「ノルマンディー上陸作戦」のオマハ・ビーチで米兵の上陸をカメラに収めた世界的に有名な写真がこの展覧会のポスターにもなっている。上陸作戦翌日の、兵士たちの死体が置かれたビーチ、数日後にはシャルトルで、ドイツ兵と関係をもったフランス人女性が頭髪を刈られ罵られながら歩かされる情景もある。
キュレーターのルフェーヴル氏は「キャパ以前からフォト・ジャーナリズムはありました。彼がもたらしたのは、新しいフォトジャーナリズムの形です」。エージェンシーがメンバーである写真家のネガやプリントを管理し販売し、写真のキャプションを自分たちでチェックする(冒頭のノルマンディー上陸の写真で、ピンボケの理由をLIFE誌が勝手に書いたこともきっかけ)。それが体現されたのが1947年、キャパがアンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デヴィッド・シーモアらとニューヨークで設立した、”写真家による写真エージェンシー”「マグナム・フォト」だ。
キャパは1954年、インドシナ戦争で40歳で命を落とした。地雷を踏んで足をふきとばされ胸をえぐられていたという。今の戦争の悲惨な映像と重なる。パレスチナでは10月7日以降、イスラエルの攻撃で100人以上のジャーナリストが殺されている。フランスは80年前ファシズムと戦ったが、欧州議会選挙でも多くの人々が極右に投票した。ノルマンディー上陸作戦80周年の今年は多くの首脳が記念式典に参加し、悲劇を再びおこさないようにという考察よりも、ウクライナ大統領と(対ナチスの戦いで大きな犠牲を払った)対ロシアの戦いの士気を鼓舞する会だった。そういう今の世界に生きながら、伝説のジャーナリストの写真を見ている自分の状況に違和感と悲しみを感じた。
Les Franciscaines
Adresse : 145B av. de la République , 14800 Deauville , FranceTEL : 0261522920
アクセス : パリSaint-Lazare駅から2h〜2h30(時間により直行あり)。電車の時刻はこちらから☞ https://www.ter.sncf.com/normandie
URL : https://lesfranciscaines.fr/fr
施設への入場は無料(好きな映画を観られる個室は会員用)。展覧会は13€/8€/5€(16歳未満無料)。 解説つき見学は、フランス語は14h30。英語は金曜16h30。