Arp mythique, Arp antique
〜Le regard d‘un artiste moderne sur les civilisations anciennes
ジャン(ハンス)・アルプと神話、アルプと古代。
〜近代アーティストの、古代文明への視線
ジャン(ハンス)・アルプとゾフィー・トイバー夫妻のアトリエを美術館にしたパリ郊外、クラマールにあるアルプ財団では、1月25 日まで「アルプと神話 アルプと古代」をテーマにした展覧会を開催。通常は2人の作品が並んでいるが、今回はアルプのみの展覧会となっている。
※ 開館日・時間など少ないのでご注意ください。記事最後をご覧ください。

Plâtre gomme-laqué. Photo J.P. Pichon. Droit : Fondation Arp
アルプは神話と宇宙に関心があった。「神話、詩に基づかず、宇宙の要素や深みに関与しない作品は亡霊でしかない」と、厳しい言葉を残している。財団責任者の話では、アルプは10代の頃から詩作を始めた詩人であり、彫刻は詩の後に来たという。詩作は一生続けた。生きることと一体化していた詩、インスピレーションの源であった神話、宇宙は、アルプの芸術活動に欠かせないものだった。
また、ギリシャ哲学、ギリシャの学者の科学理論に強い関心を持っていた。紀元前620年〜紀元前550年頃に古代ギリシャにいた賢人が「ギリシャ七賢人」と呼ばれているが、その中の1人で、ギリシャ最古の哲学者として記録に残るタレス(またはミトレスのタレス)に共感し、彫刻にした。
天文学、地理学、数学など多分野で秀でており、自然を研究し、世界の起源を神話に拠らず、合理的に説明した人だった。流れるような曲線の彫刻はタレス自身であり、タレスの理論を表したようにも見える。アルプはよほどタレスが気に入っていたようで、「タレスの国から」と題する作品も作った(冒頭の画像)。
本展のポスターになっている彫刻「プトレマイオス」は、古代ローマの学者、クラウディオス・プトレマイオスを指している。数学、地理学、天文学、光学、音楽学など幅広い分野で業績を残した。天動説に基づいて天体の運動を説明する理論を作り上げた人でもある。アルプの作品は、天動説による天球図を基にしたようでもあり、惑星の動きを簡素化したようにも見える。

一方、神話ではギリシャ神話に傾倒していた。トロイアの王子、ガニュメデスは、ゼウスによってオリュンポス山に誘拐され、神々に酒をつぐ給仕となった。星座のみずがめ座は、酒の瓶を持つガニュメデスを表しているという。アルプの「ガニュメデス」は、人と水入れが一体となって、くぼみに水が入っているかのように見える。

豊穣と農耕の女神、デーメーテールは、冥界の王ハーデースに連れ去られた娘ペルセポネーを探して各地を放浪した。アルプの「デーメーテール」には、豊かな腰つきと上半身で包み込むような温かさがあるが、垂らした頭に、娘を失った悲しみが感じられる。
「美貌・魅力・想像力」を表す3人の女神「三美神」は、西洋絵画や彫刻でよく扱われるテーマだが、アルプの手にかかるといたってシンプルな形になる。

Photo E.B. Weill. Droits fondation Arp
庭にある「ダフネ」は、アポロンの求愛から逃れるため、月桂樹の木に変身したニンフだ。アルプの彫刻が表すのは、変身後のダフネで、顔と腕が枝の切断面になっている。
先史時代の発掘物の情報を美術誌で知っていたアルプは、ヨーロッパで出土する先史時代の「ヴィーナス」と呼ばれる小さな彫刻にも注目していた。体の細かい部分を省いて臀部や胸を強調した抽象的な形のものが多い。アルプはそこからインスピレーションを得て「ムードンの小さなヴィーナス」を作った。クラマール市のアルプのアトリエは、ムードンとの境目にある。一見しただけでは、アルプのヴィーナスと先史時代のヴィーナスはほとんど変わらない。アルプの作風自体、すでに古代のヴィーナスの要素を備えているからだろう。(羽)

テキスタイルなどのデザインで知られたゾフィ・トイバーの作品は、パリ8区のギャラリー、Hauser &Wirthで1月17日から3月7日まで開催される個展で見ることができる。www.hauserwirth.com/hauser-wirth-exhibitions/sophie-taeuber-arp-la-regle-des-courbes-the-rule-of-curves
作品は、フランスのアルプ財団とは別経営のドイツのアルプ財団から。

Fondation Arp (アルプ財団)
Adresse : 21 rue des Châtaigniers , Clamart , FranceTEL : 01 45 34 22 63
アクセス : RER C線 Versailles Rive Gauche, St Quentin en Yvelines 行きに乗り、Meudon Val-Fleury駅下車。駅から徒歩10分。 バスなら Pont de Sèvres駅から169番 (始発)で、Hôpital Européen G. Pompidou行きに乗り、Val Fleury RER下車、徒歩10分 。Porte de Vanves(始発)からはバス191番があり、終点Val Fleury RER下車。
URL : https://www.fondationarp.org/
金、土、日曜。予約不要だが、金 14h30/16h 土 14h30/15h30/16h30 日 14h30/15h30/16h30に、アルプとトイバーについて説明があるので、それを聞いてから見学する。この入場の時間帯を逃すと次の回を待つことになる。 入館料:10€ / 学生と12−18歳未満:7€ / 美術学校の学生と教師、メゾン・デ・ザルティスト : 4€ 。 12歳未満、失業者ほか無料。


