2016年1月のメゾン・エ・オブジェで発表された、有田焼400周年プロジェクト。そのゲストデザイナーとして、有田焼の新たな可能性を引き出したクリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和氏の作品が、パリに戻ってきた。その佐藤可士和氏本人によるギャラリーツアーが開催され、そのコンセプト、制作過程などを語ってくれた。
現在、パリ日本文化会館内のThe Japan Store ISETAN MITSUKOSHIにて展示販売されている彼の作品は、創成期の有田焼の時代から受け継がれる「呉須(ごす)」と呼ばれる味わい深い青色の、大胆なアクションペインティングに、緻密に計算された金箔・銀箔のデザインが特徴的だ。この一見相反するアプローチを「Dissimilar(ディシミラー)」という言葉で表し、中心に据えたコンセプトになっている。
ご存知のように有田焼は、つるりとした純白の表面に細密な模様が色鮮やかに描かれたものが代表的だ。ところが、佐藤氏の作品は、巧みな職人技による絵付けではなく、今まで有田では行われていなかった手法を取り入れ、新たな可能性を示した。
濃(だみ)筆と呼ばれる、有田伝統の絵具を多く含むことのできる太い塗り込み用の筆を用いながらも、その濃筆は素焼き後の陶器の表面に触れることなく、絵具は激しく飛び散り、あるいは柔らかくにじみ、自然界の生命力を思い出させられる。そこに、 緻密な計算に基づいた形、配置の金箔・銀箔が焼きこまれている。
この偶然性に委ねた「デザイン・バイ・アクシデント」と、多くの大企業のロゴ開発やブランディングプロジェクトで発揮される彼の「デザイン・バイ・ロジック」が見事に融合し、作品の前で人々の足を止めさせ、その世界に引き込んで行く。
常に新しい挑戦を続けることでその伝統を守ってきたと言える有田焼。その次なる100年、あるいは400年への飛躍を感じるこの展示販売は、The Japan Store ISETAN MITSUKOSHI(日本文化会館内)にて開催中。大型のアートピースはもとより、気軽に購入できる豆皿やコーヒーカップなどもあるので、ぜひこの機会に見ておきたい。4月22日まで。(高)
佐藤可士和:
クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。 ユニクロ、楽天、新国立美術館などのロゴ開発やブランディング、SMAPのCDジャケットやキリンビール極生のパッケージデザイン、富士幼稚園、明治学院大学などのリニューアルコンセプトを開発し、アイデアを具現化。多数のプロジェクトを成功させる。また、有田焼400周年プロジェクト、八代目中村芝翫襲名披露などもデザインプロデュース。日本の伝統文化や技術、そこに息づく美意識の本質を掴みながら、いかに革新して現代に発信していくか。彼の伝統文化のアイコンデザインが今注目されている。2016年より文化庁文化交流使・クリエイティブディレクター。
The Japan Store ISETAN MITSUKOSHI
(日本文化会館 La Maison de la culture du Japon à Paris グランドフロア)
営業時間:12:00 ~ 20:00(火〜土)
住所:101 bis, Quai Branly 75015 Paris
TEL : 01.4572.2733
The Japan Store ISETAN MITSUKOSHI / La Maison de la culture du Japon à Paris
Adresse : 101 bis quai Branly, 75015 Paris , FranceTEL : 01 45 72 27 33
アクセス : Bir-Hakeim