ボルヌ首相とルメール経済相は9月14日の記者会見で、来年1月から一般家庭への電気・ガス料金の上昇を15%に抑えるよう政府が支援を続けるとした。また、低中所得世帯向けには「エネルギー小切手」を支給し、エネルギー価格高騰によって莫大な利益を得た企業への特別税も設ける方針だ。
政府は昨年秋から今年いっぱいは一般家庭向けのガス料金凍結、電気料金値上げ上限4%の措置を続けていたが、エネルギーの市場価格高騰が続くなか、来年の対策が待たれていた。
首相は、何も対策を講じないと電気・ガス料金は1月に2.2倍になるため、ガスは1月から、電気は2月から値上げを15%に抑えるよう国が差額を負担する措置を決めた。また、全世帯の4割に相当する1200万の低中所得世帯には所得に応じて100~200€の「エネルギー小切手」を年末までに支給する(18億€)。ガソリン・軽油小売価格1ℓあたり30ユーロセントの政府援助は年末に終了するが、状況によっては復活させる可能性もあるとした。
また、経済相はエネルギー価格高騰で莫大な利益を上げたエネルギー企業に特別税を課し、電気・ガス料金抑制の政府支出に来年度450億€かかるところを160億€に抑える方針を示した。
さらに、政府は省エネ努力が十分でなければ厳冬の場合は計画停電もありうるとし、エネルギー消費量を今後2年間で10%削減する具体策を10月初めに発表する予定だ。仏電力会社(EDF)の子会社、送電網会社(RTE)は、10月15日から来年4月半ばまで、ウェブサイト「Ecowatt」(www.monecowatt.fr)で電力需給のひっ迫状況を緑、オレンジ、赤で示し、登録者にはメールやSMSで通知して電力使用抑制を促す試みをすでに開始している。
エネルギー価格高騰でダメージを受ける企業についても支援策が継続される。売上200万€未満、従業員10人以下の小企業については一般家庭と同じ電気・ガス規制料金を享受し続けられるようにする。
それ以上の規模でエネルギー消費の大きい企業は、その消費が売上の3%以上であることを証明する書類、あるいは電気・ガス料金が昨年より増加し利益が低下した書類を提出すれば政府の支援金を受けられるという。
政府はエネルギー価格高騰に苦しむ地方自治体にも援助をする意向を示した。たとえば、全国の市営プールのうち30ヵ所を委託運営するヴェール・マリーン社は9月5日にガス価格高騰を理由に営業を突然停止したが、市営プールは児童生徒が水泳の授業にも利用するため反発の声が上がり、市がガス・電気料金を交渉することで中旬には全プールが営業を再開したという例もある。
EUレベルでは冬季の10%省エネ策に加え、電力価格にも反映されるガス価格に上限を設ける案が出ていたが、供給に支障がおきる可能性がある点で加盟国の合意がならず協議中だ。一方で、フォン・デア・ライエン委員長は14日、環境負荷の少ない水素燃料の開発にEUと加盟国政府が大幅な投資を行う方針を発表。また、エネルギー価格高騰による莫大な利益を得た企業への特別税を設置する意向も明らかにした。
フランスの来年1月からの電気・ガス価格の上昇に制限が加えられる対策や企業支援策で、多くの国民は胸をなでおろしたことだろう。だが、この冬の電気・ガス供給への不安は依然として残り、省エネの努力は今からでも実行しなければならない。(し)