欧州議会議員選挙が加盟28ヵ国で5月23〜26日に実施された。2大勢力だった欧州人民党グループ(EPP)と社会民主グループ(S&D)が低迷するという予想通り、EPPは改選前217議席から175議席、S&Dは186から148議席に。逆にエコロジストが独では議席を倍に、仏でも3位につき、50から77議席に躍進した。一方、英EU離脱の是非を問う第2の国民投票となった英国では、ファラージュ率いるEU離脱党が31%(29議席)でトップに立ったこともあり、EU懐疑派の極右・ナショナリストが85議席から115議席に増えた。しかし、英国が離脱すれば議席数は減り、反EU派が共同戦線を張る可能性は低く、これまでのEUの流れを大きく変えることにはならないだろう。投票率はここ20年来最高の51%と、EU選への関心回復を示した。
欧州議会は加盟国の人口に応じて議席が各加盟国に振り分けられ(ドイツ96議席からマルタ6議席まで)、計751議席、直接選挙の比例代表制で任期は5年。EUの執行機関である欧州委員会の委員長・委員を承認し、委員会が提案し閣僚理事会の同意を得た法案、予算案などを審議する立法機関だが、法案提出権はない。
国ごとに事情が異なるため明確な争点が絞れないEU選では、それぞれの国で国内問題が争点になる。黄色いベスト運動が昨年11月以来続くフランス(74議席)では、現政権への信任投票の様相を呈した。マクロン大統領が極右の国民連合(RN)の躍進阻止を掲げて選挙戦にテコ入れしたものの、RNは23.3%で2014年に続いてトップに立ち、共和国前進/Modemは22.4%に止まった。しかし、エコロジストが予想外に健闘し(13.5%)、若い世代を中心とする環境問題への関心の高さをうかがわせた。以前の2大政党である共和党(8.5%)、社会党と「公共広場」連合(6%)も低迷し、黄色いベスト運動の勢いが有利に働くと見られた「服従しないフランス」も6.3%でかろうじて議席確保に必要な5%のラインを超えたのみ。
ドイツでも与党連合CDU-CSUと社会党の2大勢力が低迷。イタリアでは、欧州のポピュリスト政党指導者を集めて結束を謳ったサルヴィーニ内相の「同盟」がトップ(34.3%、28議席)に。今回のEU選ではスペインを除いて伝統的政党が後退し、その票が極右ナショナリストとエコロジストに流れたようだ。数の上では第3勢力にのし上がった極右が共闘できないとしたら、環境保護がEUの政策により反映されるようになるのだろうか?欧州の若者の環境保護運動の高まりに呼応したEUの動きに期待できるかもしれない。(し)