デュフィ展はさんざん見てきた、と思っている人も、モンマルトル美術館の本展で「こんなデュフィは見たことがない」と感じるのではないだろうか。実は(羽)もその一人。故郷ノルマンディーの海辺の町を描いた風景画で知られているが、ここにはパリを扱った作品しかない。
ラウル・デュフィ(1877-1953)はル・アーヴル生まれ。故郷でデッサンを習った後、奨学金を得て22歳で上京し、パリ国立美術学校に入学した。1911年に結婚し、妻と長年モンマルトルの小さなアトリエ兼住居に住んだ。そのアトリエをテーマに描いた3点が展示されている。
注目すべきは、アトリエの中から見える風景を描いた「ゲルマ通りのアトリエ」。窓の外の建物の色と室内の色が共鳴し、「中」と「外」が通じ合う。デュフィにしては珍しくミニマリスト的な作風で、マティスの影響も見える。
「デュフィとパリ郊外」は考えつかない組み合わせだが、マルヌ川のほとりを描いた風景画(記事冒頭の作品)は、さまざまな緑色が炸裂する、色彩画家デュフィの本領発揮と言える作品だ。
デュフィはタペスリーにも関心を持った。1922年から10年間、家具職人と協力し、パリの名所をテーマにゴブラン織の椅子を制作した。背もたれにコンコルド広場やオペラ座の図、座る部分に薔薇を配した華やかな家具だ(下写真)。
パリを上空から捉えたゴブラン織のパノラマ屏風は1933年の作。実物の大きさを無視した構図で、エッフェル塔が異常に大きく、下部は花で埋まっている。ナイーヴアートに通じるあっけらかんとした明るさがあり、未来への希望とパリへの愛情が感じられる。
ファッションとの関係も見逃せない。デザイナーのポール・ポワレと長年協力し、1911年からポワレがドレスに使う布をデザインした。白黒の木版画にも言えることだが、デュフィのテキスタイルデザインはメリハリが効いている。テキスタイルでは、さらに色をたっぷり使い、厚みのある色彩空間を生み出した。
会場には、雑誌のために描いたデザイン画もある。ここでも彼のデザインのセンスの良さがわかる。(羽)
2022年1月2日まで。ネット予約可。
Musée de Montmartre - Jardins Renoir
Adresse : 12 rue Cortot, Paris , FranceTEL : 01 49 25 89 39
URL : www.museedemontmartre.fr
18歳以上はパス・サニテールと身分証明書要。水〜日、11h-18h。大人 : 13€ / 18−25歳 : 10€ / 10−17歳:7€