Daube provençale(ドーブ・プロヴァンサル)

12月から4月くらいまでがオレンジの季節。プロヴァンス地方の伝統的な料理ドーブ・プロヴァンサルは、この果物の香りを生かすことが多い。大みそかに友人たちを招いたときにつくってみたら大好評だった。
牛肉はゼラチン質が適度に混じり込んでいる肩ロースpaleronがいい。ゼラチン質は固いので肉屋に適当に切り分けてもらって持ち帰り、5センチ角に切りそろえる。
オレンジは皮をつかうので、有機栽培bioのものがほしい。オレンジ1個あるいは1個半の皮をペティナイフか皮むきでできるだけ薄く、そぐように切り出し、細く切る。これをオーブンシートに広げ、120°Cに合わせて熱くしたオーブンに15分から20分入れて乾燥させる。「こうすると苦みがとれていい香りになるのよ」と南仏出身のヴァレリーさんに教わったからだ。
底広の鍋に肉を入れ、1本分の赤ワインを注ぐ。コット・デュ・ローヌや南仏産のミネルヴォワなどタンニンが強いものがほしい。オレンジの皮、薄く輪切りにしたニンジン、薄切りにした玉ネギ、タイム、ローリエの葉、押しつぶしたニンニク、黒コショウ、丁字を混ぜ入れればマリナードになる。ラップして24時間寝かせておく。ときどき大きく混ぜ合わせる。
さあ24時間たった。肉をとり出す。マリナードは5分ほど沸騰させ、こして野菜やハーブをとりのぞいておく。肉の水気をキッチンペーパーで丁寧にぬぐいとる。ココット鍋にオリーブ油を大さじ2杯とって中強火にかけ、肉を三回くらいに分けていため、きれいな焼き色をつけ、マリナードを注ぐ。トマトピューレも加え、塩、コショウ。沸騰したら弱火にし、ふたをし、ときどき混ぜ合わせながら2時間半煮込んでいき、大きめに切り分けたニンジンを入れる。もう40分火を通し、仕上げに黒オリーブとオリーブ油を大さじ2杯加える。
寝かす時間や調理時間を計算するのが面倒なら、ドーブは煮直せばさらにうまくなる料理だから、前日にでもつくっておき、みんがそろったら煮直すのが正解だ。付け合わせは、ゆでたジャガイモやマッシュポテト、あるいはペンネリガーテ。(真)
【材料】5、6人分:
牛の肩肉1.5kg、ニンジン3本、種抜き黒オリーブ150g、オリーブ油大さじ4杯、トマトピューレ大さじ2杯、塩(黒オリーブが入るのでひかえめ)、コショウ
マリナード:赤ワイン1本、オレンジ1個半分の皮、ニンジン2本、玉ネギ1個、タイム5、6枝、ローリエの葉2枚、ニンニク4片、黒コショウ粒小さじ半杯、丁字2本

Daube
「daube」の語源はプロヴァンス語の「adobo(準備するという意味)」だという。以前は、daubière( 写真)という土器をつかって、暖炉の片すみにおいて長時間かけて火を通した。ドーブ・プロヴァンサルにはさまざまなバリエーションがある。たとえば肉にしても、牛肉だけでなく、カマルグ風だと雄牛肉、アヴィニョン風だと子羊の肩肉で赤ワインでなく白ワインをつかう。牛肉と子牛肉半々のレシピもある。こってりとした味わいにしたいのなら、豚のあばら肉を加える。野菜にしても、ニンジンさえも入れないシンプルなものにはじまり、ニンジン、小玉ネギ、マッシュルームや季節ならセープ茸を入れたりと、さまざま。ぼくらもいろいろと工夫してみよう。

Salade d’endives à l’orange
オレンジの香りと甘酸っぱさを料理にも活用したい。豚のフィレミニョンやカモの胸肉とのレシピを紹介してきたが、やはり冬が旬のアンディーヴと組み合わせたサラダも素晴らしい。まずオレンジ風味のドレッシングを用意する。オレンジ2個をしぼって細かな目のパソワールや茶こしでこす。オリーブ油大さじ3杯加えて泡立て器で丁寧に混ぜ合わせ、塩、コショウで味を調える。オレンジが甘すぎるようなら、レモンのしぼり汁少々を足すといいだろう。アンディーヴ3、4個を細く切り分けてサラダボウルにとる。オレンジは、鋭利な包丁で、皮を白い部分もふくめて厚くそぎ切ってから半分に切り分ける。それを薄く切ってアンディーヴに混ぜ入れ、ドレッシングで和える。アンディーヴの軽い苦みとオレンジの味わいが一つになってうまい。赤紫色が混じり入ったイタリア風アンディーヴchicorée de tréviseをつかえば、さらに絶妙ないろどりになる。サラダとしてだけなく、クールブイヨンで煮た魚介類や子牛肉のローストの付け合わせとしてもおすすめしたい。
