フィリップ首相は4月28日、国民議会で、5月11日以降の段階的な外出規制解除の方針を語った。状況の改善が認められない場合は解除はしない。また、国内でも感染状況は地域ごとに異なるため、今週から県ごとに「赤」「緑」と評価をし、5月11日以降の外出規制を続ける・緩めるなどの目安とする。カフェやレストランの営業再開については5月末に状況を見て6月2日の営業再開を検討すると述べた。また、5月11日からは、外出特例証明書が不要となる(100km以上の移動は必要)。
首相はこの演説で交通機関、商店営業、学校、社会活動、企業活動などの再開に触れたが、ここでは、5月11日以降の交通機関の運行を扱う。
・交通機関利用時はマスク着用義務に。
・交通機関運営側は、首都圏では運行を増強しつつ、利用者を減らして混雑を緩和。乗客が他の乗客と1mの距離を保てるよう2席に1席は不使用とし、車内やホームの床に印をつける。
・長距離交通については運行を減らし、人々の移動を抑える。
首都圏の交通
RATP(パリ交通公団)は、メトロ、バス、トラムなどの運行を通常の70%まで増やす(現時点は通常の30%)。同時に、利用者を減らすためにテレワークを継続を奨励し、企業は社員の就労時間帯をずらしたり、混雑する時間帯は就労者のみが交通機関を利用できるようにするなどで、ラッシュを緩和する。
スクールバス、タクシー、ハイヤー
スクールバスの運転手と、中学生以上はマスク着用を義務とする。タクシーやハイヤーでも、乗客との仕切りがない車は、マスク着用を義務付ける。
長距離の交通
越県、地域圏間の移動に関しては、フランス国鉄SNCFは運行を通常の7%にとどめる。人々の移動を抑えるためにTGV、そのほかの電車も全予約制とし、急を要する移動のみに限るとした。
運営側の困惑
現在では利用者が50万人にまで減っているパリ首都圏の交通網だが、平常時は1日1200万人。5月11日以降、パリ首都圏の交通が、首相が提示した感染対策をとりつつ、通常の70%運行した場合、移動できるのは200万人程度だという。交通機関の運営者側は、頭を抱えている。
具体的にどのように「2席に1席を不使用とする」のか。メトロ、バスなどの狭い車内で、人が多くなってきたら乗車を拒否するのか、誰がどうやって拒否するのか。地下鉄のホームで乗車を拒否すればホームに人があふれて危険になる。「大勢の人が一度に駅に殺到しないように準備する」とは具体的にどうするのか。駅構内の人数を制限すれば入口に人が密集してしまう。ラッシュ時に、どうやって通勤者とそうでない人を区別するのか…。問題は山積だ。