「世界の料理コンクール イン・セーヌ・サン・ドニ」
Championnat du Monde des Cuisines du Monde In Seine-Saint-Denis
パリの北東に隣接するセーヌ・サン・ドニ県が、地元食材を使うことを条件とした「世界の料理」コンクールを行う。5月14日、ステファン・トルセル県議会議長をはじめとする県の関係者と審査員がサン・ドニ市の農園で詳細を発表した。題して「世界の料理コンクール イン・セーヌ・サン・ドニ」。
同県には150カ国の出身者が住んでいる。国際色の豊さを生かし、異文化の香りがする独創的な料理にスポットを当てて、それを分かち合うことがコンクールの目的だという。
「家庭料理 Recettes de Famille」の部と「料理とクリエーション Cuisine & Création」の部がある。前者はアマチュア向けで、後者はプロとセミプロが対象だ。どちらも2人一組で応募する。「家庭料理」の部では、県出身または在住の10〜25歳の人と、その人の18〜99歳の家族・親族が組んで、出身国の伝統料理やその家独自の料理を作る。
「料理とクリエーション」の部では、料理人とアーティスト(造形作家、写真家、デザイナーなど)が組む。陶芸作家の器に料理を盛るのもアリだ。この部では、料理人かアーティストのどちらから県在住、出身、仕事場があるなどの県関係者であれば良い。
もう一つの大事な応募条件は、セーヌ・サン・ドニ県で採れる農作物や、県内で加工された食材を最低2つは使うことだ。県内には多くの農園がある。コンクール発表の場を提供した市民農園「ゾーン・サンシーブル」では200品種の野菜や果物、花を栽培している。同県にはハチミツ、ワイン、ビール、ジャムなどの製造業者もいる。応募要項に県の食材の入手先リストがついているので、材料の手配を心配しなくてもいい。
「ゾーン・サンシーブル」はサン・ドニ市最後の農家が引退した後、その農地を借り受けた団体「パルティ・ポエティック」が始めたパーマカルチャーの農園だ。同団体は、アートと食べ物、農業、自然を結びつける活動を行なっており、「メイド・イン・セーヌ・サン・ドニ」をプロモートする県のブランド「イン・セーヌ・サン・ドニ」とともにコンクールの共同主催者となっている。
セーヌ・サン・ドニでは2005年、マグレブ系の若者3人が警察に追われ、逃げ込んだ変電所で感電死した事件をきっかけに若者の警察に対する怒りから暴動が起き、それがフランス全土に飛び火。メディアや一部政治家に、治安の悪さなどネガティブな面ばかりを拡散されてきた。このイベントには、創造性豊かな地元のエネルギーをポジティブに発信することで、県のイメージアップに貢献したいという思いもあるようだ。
7月6日が書類選考の締切で、実際に料理を作る予選が9月10日に、最終選考が9月24日に行われる。家庭料理の部では、ゾーン・サンシーブルから食材を仕入れているパリのレストラン「NOSSO」アレクサンドラ・モンターニュ・シェフ、料理とクリエーションの部ではホテル・ムーリスのアモリー・ブウール・シェフが審査委員長を務める。
参加する2人のうちのどちらからセーヌ・サン・ドニに関係していれば良いので、県在住ではない日本人シェフも地元のアーティストと組んで応募できる。セーヌ・サン・ドニ県の住民の一人として、独創的な和の料理も加わって、コンクールが大いに盛り上がってほしいと思う。(羽)
応募要項はこちらから。