ブレグジット、第1段階の交渉は終結したものの…

 121415日にブリュッセルで開催された欧州連合(EU首脳会議は、EU委員会とメイ英首相の間で8日に取り交わされた合意を承認し、英国のEU離脱(ブレグジット)交渉の第2段階に入ることを宣言した。

2段階はいよいよブレグジットの核心ともいえる通商問題が中心となるが、実質的な交渉は3月以降になる見込みだ。20166月に英国が国民投票でEU離脱を決めてから1年半かかって、ようやくここまで交渉が進んだが、ブレグジットが具体的にどういう形になるかが判明するにはまだ長い道のりが必要なようだ。

20166月の国民投票を受けて英国が離脱手続きを開始するEU基本条約第50条を発動したのは、9ヵ月後の今年3月末になってから。離脱日は2年後の2019329日と定められた。これを受けて、EU離脱の清算金、離脱後の英国在住EU市民の滞在資格や権利、英国領北アイルランドとアイルランドの間の国境をどうするか、という離脱条件3点についての交渉が619日にスタートした。

英国がEUに支払う清算金については、メイ首相は当初200憶ユーロを提案。しかし、201420年の英拠出金はすでに予算に織り込み済みの上に、英国籍のEU職員の退職金も英国が負担すべきだとしてEU側は受け入れず、英首相は128日に500憶ユーロに引上げて同意となった。

2点目の英国在住の300万人のEU市民、英国以外のEU域内在住の100万人の英国人の滞在資格かどうなるのか、社会保障制度の恩恵を受けられるのかなどの懸念も大きかったが、今回の合意により、従来の滞在資格や社会保障、年金などの権利は変わらないことが確認された。

しかし、3点目のアイルランド国境については今回の合意の行方はあいまいだ。北アイルランド紛争に終止符を打った1998年のベルファスト条約を維持し、目に見える形での国境は設けない、同国境については、単一市場と関税同盟を維持すると8日に合意された。しかし、この点については、6月の英総選挙で過半数割れとなったメイ首相の保守党と閣外協力を組んだ北アイルランドの民主統一党(DUP)が強硬に反対しており、今後のメイ政権の成り行きによっては見直される可能性もある。

13日には、EU離脱条件について政府が決定することは議会の承認が必要になるという法案を、11人の保守党議員が政府に背いて賛成し、英下院で可決された。保守党内もEUときっぱり袂を分かちたいハードブレグジット派とその反対のソフトブレグジット派に分裂している。閣外協力のDUPもハードブレグジット派だ。3以降の交渉で、通商面の離脱条件で合意が成立したとしても、離脱後の新たな通商関係――たとえばカナダ=EU間の包括的経済貿易協定(CETA)に準じた自由貿易協定――を結ぶには、英国が完全に「第3国」になる2019329日を待たねばならない。その離脱日に関しても、メイ首相は20日、EUとの交渉が難航する場合は延期可能との修正案を自党内の圧力に屈して飲んだ。離脱後の移行期間も、メイ首相の2年間(20213月末)に対して、EU委は19ヵ月(2020年末)を提案しており、ここでも英首相は苦戦を強いられそうだ。

単一市場と関税同盟をきっぱり清算すると約束していたメイ首相だが、EUの束縛を最小限に抑えつつ自由なモノとサービスのやり取りを享受したい英国と、そうはさせないEUとの来年秋頃まで続く交渉は厳しいものになるだろう。不安定なメイ政権が今後、ブレグジットのコアである通商関係の交渉をどのように切り抜けていくのか。そもそもメイ政権がどこまで存続できるのかも含めて、見通しはきわめて不透明だ。(し)