Bonnard et le Japon
ピエール・ボナール(1867-1947)はナビ派の中でも、身近な人々や身辺のものを描く「親密」な画風で知られているが、「ナビ・ジャポナール(日本かぶれのナビ)」とあだ名されるほど、ジャポニスムにのめり込んだことでも有名だ。エクサンプロヴァンスの美術センター 「コーモン館」の 〈ボナールと日本〉展では、ボナールがどのように浮世絵の影響を受けたかを詳細に見せている。
ボナールが最初に浮世絵を見たのがいつだったかの記録はないが、1890年春、東洋美術を専門分野の一つとする美術商、ジークフリート・ビングが国立美術学校で開催した日本版画展は見に行った。725点の絵と428点の画帖を展示した、大規模な浮世絵展だった。そこで浮世絵の色の鮮やかさや構成に大きなインパクトを受け、美術の新しい方向性を感じた。「色彩と光の画家」と称されるボナールは晩年、浮世絵から「光も形も性質も、色だけであらわすことができることがわかった」と語っている。
浮世絵の遠近のない画面と装飾性に影響を受けたことはよく指摘されるが、近景と遠景を細かく描き、両方に挟まれた真ん中を空けることも浮世絵から学んだと、本展キュレーターで、国内外で多くのボナール展のキュレーターを務めたオルセー美術館名誉学芸員のイザベル・カーンさんは言う。それを表すいい例が「南仏のテラス Terrasse dans le Midi」(写真上)だ。
カーンさんは、日本の影響についての研究は、対象がこれまで1890年〜1900年の作品に限られていたが、実は一生影響を受け続けていたとも説明した。特に、ものの見方や人生哲学について、ボナールは浮世絵師が社会を見る目に共感し、全てが儚(はかな)く移ろっていく浮世を瞬時に捉え、通行人やカフェの人々の動きを映画の一場面を切り取るように描いた。浮世絵とのテーマの相似も一生続いた。
会場では人物に犬や猫の愛玩動物がからむ場面、母と子の組み合わせなど、同じような題材で描かれた浮世絵とボナールの絵を隣り合わせにして見せている。浮世絵は、パリ在住のポーランド人実業家、ジョルジュ・レスコヴィッチ氏の世界有数の浮世絵コレクションから貸し出された。ボナールは妻のマルトをモデルにした浴室の女性の絵でも有名だが、それに関連づけて、銭湯に入る女性を描いた珍しい浮世絵が出ている。脱衣所で女性の足元に四角い布が敷かれている。「風呂敷」の語源となった、他人のものと混じらないよう、脱衣した後着物を包んでおく布だ。何度も使える包材として、風呂敷はエコロジー意識が高まるフランスで認知されるようになった。
ボナール展は、思いがけなく、現代のフランスに影響した日本の物品の源まで見せてくれた。10/6まで。(羽)
Caumont Centre d'Art Aix-en-Provence
Adresse : 3 rue Joseph Cabassol, 13100 Aix-en-ProvenceURL : http://www.caumont-centredart.com
毎日 10h-19h パリGare de Lyon からMarseilles St-Charlesまで TGVで3時間半。TERでAix en Provenceまで45分。 駅から徒歩5分。15.50€/14.50€65歳以上/12.50€/ 10€ (7〜25歳)