Au Pays des monstres. Léopold Chauveau(1870-1940)
医師であり、独特の世界観で彫刻、絵画、著作を残したレオポルド・ショヴォー。「怪物の国で」のタイトルのとおり、主人公は奇妙な怪物たちだ。雑多な生き物が混ぜこぜになったような奇怪な姿。でもなぜか親しみがわく。そして彼らが住むのは、過去でも今でも未来でもない国だ。
獣医で解剖・生理学の教授を父親に、厳格な家庭に育つ。少年時代は中世の教会に施された怪物の彫刻、浮世絵の妖怪、ラ・フォンテーヌの寓話などに夢中だった。父の命で医者になるも、仕事はどうしても好きになれなかったが、結婚し、ふたりの息子が生まれて引っ越したヴェルサイユで転機が来る。隣人だった画家・彫刻家のジョルジュ・ラコンブの手ほどきで彫刻を始め、やっと心の拠り所を見つけたのだ。1905年、35歳のことだった。
さらにふたりの息子に恵まれ、病院勤めをしながら創作の日々を過ごすが、1914年、第一次大戦が勃発し、軍医として従軍。この時期、次々に悲しい出来事に襲われる。1915年、16歳だった長男ピエールが溺死。1916年には親友ラコンブが結核で死亡。1917年に父オーギュストが亡くなり、終戦間近の1918年の夏に憔悴(しょうすい)した妻ルネが死亡。さらにその年の冬、12歳だった三男ルノーを敗血症で亡くしてしまう。
1922年に医者を辞め、翌年から児童文学を出版し始める。父親が小さな息子ルノー君に物語をこしらえて聞かせるという筋立てだが、しばしば大人の理屈をひっくり返すルノー君のおかげでパパの目からウロコが落ち、父と子の共同作業で物語が出来る。こうして出来たお話は、人間と動物の隔たりがなく、生と死が平等で、偽善もおごりも、時もない世界に繰り広げられる。ショヴォー自身が描いた簡素な線と色の挿絵は、素朴だが、得も言われぬ存在感がある。
会場にはクイズコーナー、物語の朗読ブースなど、子どもも楽しめる工夫がある。壁の大スクリーンには怪物のいる風景が投影されていて、そばにあるタッチパネルで自分の怪物を描けば、直ちにその仲間に入れてもらえる。最終日も近づいているので見逃さないように!(仙)
オルセー美術館 : 月休9h30-18h(木は-21h45)
9/13まで 14€/11€
www.musee-orsay.fr