“A table! le repas tout un art”
2017年、エマニュエル・マクロンは大統領に就任すると間もなく、大統領府の食器一式をセーヴル陶磁器製造所に注文し、「浪費だ」と批判され話題となった。今、セーヴル陶器美術館で開かれている展覧会「テーブルへ!食事は芸術」では、その300枚からなる「エリゼ宮ブルー皿」セットが一部見られる。
大統領府のために作られた食器で金の装飾がないのは初めてで、白と青ですっきりとモダンだ。パズルのように皿を並べるとエリゼ宮の大きな見取り図ができるエヴァリスト・リシェのデザイン。2019年ビアリッツG7のディナーで初めて使われた(写真下)。
2020年は「フランスの美食」がユネスコ世界無形遺産に登録された10周年で、セーヴル製造所が創設されて280周年。それを記念するのがこの食とテーブルアートについての展覧会だ。今世紀になって「美食外交 Gastrodiplomatie」という言葉が作られたほど、食はフランス外交のソフトパワーになっている。セーヴルの食器は首脳たちの食卓を彩り、外交に参加してきたともいえるだろう。
1900年頃の大統領府のテーブルセッティングは圧巻だ。グラス4つにおびただしい数のスプーンやナイフ。テーブル中央には10体ほどの、スカーフを翻して踊る白い彫刻が装飾として置かれている(写真)。
18世紀のデザートテーブルにも感服する。6人の小さな会合のようだが、下に氷を入れ保冷できるアイスクリーム容器、アイスクリーム用の小さなカップ、コンポート入れ、パティスリーの皿…相当な甘党の集まりだ。辛党には辛いだろう。食器は当然、そこに盛られる料理と切り離せない。古代から今日までの食そのものの変遷もたどれるようになっている。
個人的に最も惹かれたテーブルは、ガリア人たちがローマ風に寝そべって飲食する宴席だ。音楽や踊り、遊びなどの余興をはさみながら、オードブル、海鮮、肉の煮込みか焼いたもの、魚、果物、甘いものなどが供されたという。ご馳走の並ぶ華やかなテーブルもいいけれど、マナーに縛られず、ゆったりと楽しめそうなのだ。(美)
Musée national de céramique de Sèvres
Adresse : 2 pl. de la Manufacture, 92310 Sèvresアクセス : T2 : Musée de Sèvres M°Pont de Sèvres
URL : http://www.sevresciteceramique.fr
火休、10h-13h/14h-18h。「A Table!」展と常設展両方で 8€/6€ ガイド付き特別展見学は入場料込みで10€。 入口でも入場者数によりチケットは買えるが予約がベター。