「お利口ではいられない、17歳にもなれば」。
ランボーの詩「物語(Roman)」の冒頭の一節だ。フランソワ・オゾン監督の映画『17歳(Jeune & Jolie)』では、授業シーンで生徒たちがこの詩を読んでいた。仏映画界の重鎮アンドレ・テシネもまた同じ詩から着想を得て、新作に『Quand on a 17 ans(17歳の頃)』というタイトルをつけた。
本作は先のベルリン映画祭に出品され、「『野生の葦』以来の、思春期についての美しい傑作」と賞賛を浴びた。主人公は対照的なふたりの男子高校生。町に暮らすダミアン(ケイシー・モッテ=クライン)は父が軍人、母が医者の裕福な優等生。農場に暮らす褐色の肌のトム(コランタン・フィラ)は家庭環境も複雑だ。クラスメートのふたりはいがみ合うが、ダミアンの母が病身のトムの母を診察したことから急接近。憎しみはやがて愛に転化されてゆく。
脚本に有名監督のセリーヌ・シアマを迎え、ジェンダーの垣根を超えた愛の誕生を見届ける。ただしシアマの出世作『水の中のつぼみ』のような女性同士の柔らかな愛とは違い、やはりここでは伝説のカップル、ランボー&ヴェルレーヌの激しい恋愛関係を思い出させる。ふたりは敵対心でぶつかり合うも惹きつけられ、絡み合っては愛し合う。持て余す若さが切なくも美しい肉体の映画だ。
母役の名優サンドリーヌ・キベルランの板についた女医ぶりも素晴らしい。昨年、彼女の実人生での元旦那ヴァンサン・ランドンが、『La loi du marché』でカンヌ映画祭の主演男優賞を獲り話題となったが、キベルランの女医ぶりは、ランドンの職業への鋭い観察眼にも通じるものだ。(瑞)