Tomates concassées au basilic
夏はトマトがうまい。前回は赤ピーマンやクルジェットといっしょに詰め物をしてオーブンで焼いたけれど、今回は煮込んでからバジリコの香りをつけて冷ますだけというシンプルな一品だ。暑くて火を使うのもイヤな時には、冷蔵庫に入れておいたこのひんやりとした煮物をトーストにのっけるだけで簡単な食事になってしまう!
こんな風に煮込む時は、初夏になると出回ってくる、olivetteのような細長い形のトマトがいい。ツヤがあって真っ赤に完熟したものを2キロは買ってくる。面倒なら皮付きのままでもいいけれど、olivetteは皮が厚めなので、湯むきするとやっぱり舌ざわりがちがってくる。二つに割って、種の部分の水っぽい部分をとりのぞき、粗くきざんでおく。エシャロットは細かなみじん切り。ニンニク4片は皮をむいて二つに割り、芯にある芽をとりのぞく。
ココット鍋のような厚鍋に上質のオリーブ油をとり、まずニンニクを加える。いい匂いが立ったらエシャロットを加える。エシャロットが透き通ったらトマトを加える。塩、コショウ、酸味を緩和するための砂糖二つまみを加え、20分くらい煮込んでいく。火を止めてから、きざんでおいたバジリコをたっぷりと混ぜ入れればできあがり。
そのまま前菜に出してもいいし、ポーチドエッグを添えてもいいけれど、ボクのおすすめはブルスケッタ。ポワラーヌのような田舎パンを軽くトーストし、そこに細かな切れ目を入れたニンニクをこすりつけて香りを移し、極上のオリーブ油を刷毛で塗りつけ、トマトの煮込みを大さじ2杯ほどのせる。
あったらアンチョビーの油漬けを2尾、交叉するように置けば完璧だ。よく冷えた白ワインをお供にすれば暑さしらずのうまさ!
この煮込みが残ったら、タッパーウェアに入れ、オリーブ油で覆い、きちんとフタをして、冷蔵庫で保存すると、ソースやら付け合わせにといろいろ便利。(真)
トマト2キロ、エシャロット4個、ニンニク4片、バジリコ1束、オリーブ油、塩、コショウ
●トマト豆辞典
トマトは、ロワール川沿岸やオランダで温室栽培されたものが出回って一年中手に入るようになったが、形は整っていて色は赤々だけれど、あのトマト特有の甘味や酸味に欠けていてガッカリすることが多い。これではトマト嫌いが増えてしまう。トマトがおいしくなるのはこれから秋にかけて。南仏やモロッコ、スペインから、野外で太陽をいっぱいに浴びて育った、形も大きさもさまざまなトマトたちが登場する。その上、最近は、黄色い”ananas”とか、大きくてでこぼこした”coeur de boeuf” のようなトマトも並んだりするから、いろいろと試してみたいものだ。イタリアからは “roma” という細長いトマトもやってくる。夏になって出回る南仏産の “olivette” は、 “roma” より小柄の細長いトマトで、素晴らしい味だ。トマトソースにも向いているから、安い時に大量に作って冷凍しておきたい。
トマトの皮をむいてから調理したい時は、へたのところをえぐりとってから、鍋に沸騰している熱湯に8秒ほどつけてから取り出し、身が柔らかくなりすぎないように冷水で冷まし、小さなナイフでむいていく。サラダにする時でも面倒がらずに皮をむくと、食べやすくなるし、ドレッシングもよく浸みておいしいものだ。
●トマトソースの利用法
今回のレシピで作ったトマトソース、上のようにトーストにのせるだけでもおいしいし、グリルあるいはソテーした魚に、ごはんといっしょに添えるとうまい。あるいは皿にこのソースをたっぷりと敷きポーチドエッグとか目玉焼きをのせ、流れ出る黄身といっしょに混ぜ混ぜしながら食べる幸せ。こんな時はニンニク風味を付けたクルトンなんかを添えたいなあ。このソース、熱いうちなら、最高のパスタのソースになる。薄く切った山羊乳チーズやモッツァレラチーズとの組み合わせもいい。
●ドライトマト
トマトが安い時にドライトマトをたっぷり作っておくと、イタリア風前菜や魚料理の付け合わせなどに重宝する。olivetteを1.5キロ買ってくる。面倒でも皮を湯むきしてから二つに切り分け、種の部分を取りのぞく。オーブンプレートに軽くオリーブ油を塗り、トマトをきっちりと並べる。軽く塩、コショウ。タイムやローリエ、ローズマリー、それに皮をむいてから切り分けたニンニクなどを散らし、80度ほどに熱くしておいたオーブンに入れる。2時間から3時間で好みの乾燥度になったら取り出し、すっかりかぶるようにオリーブ油に漬けて保存する。(真)