Filet mignon a la creme d’ail
豚肉の中でもビックリするほど柔らかなフィレ・ミニョン。1頭から少量しかとれないこともあって、値段も少々張るけれど(キロ18euros前後)、それだけのうまさは十分にある。これまではケッパー風味のイタリア風や、パイ皮で包んだローストを紹介してきたが、今回は、柔らかな風味のニンニクのクリームソースを添えることにした。
まずニンニクのクリームソースの下準備。ニンニクは半分に切って中心の芽の部分をとりのぞき、半リットルの熱湯で10分ほどゆでる。これをゆで汁100ccといっしょにミキサーにかけてクリーム状にし、生クリームを加え、塩コショウでやや薄めに味を調えておく。
フィレ・ミニョンは4人分として、600グラム以上の大きめのものを買ってくる。これを厚さ1センチくらいに切り分ける。一枚一枚がなるべく大きくなるように斜めに包丁を入れていくのだが、こわれやすいので包丁はよく研いでおくこと。
フライパンを中火にかけ、バターを入れ、それが溶けたらフィレ・ミニョンを重ならないように並べる。1分ほどたったらひっくり返し、もう一方の側も1分焼いて両面にきれいな焼き色をつける。ここで火を落とし、2度ほどひっくり返しながら6分ほど焼いていく。焼き過ぎると固くなるので注意が肝心だ。肉を取り出し、熱々にしておいた皿に盛り付ける。
フライパンは洗わず今度は強火にかけ、用意しておいたニンニククリームを一気に加える。木のヘラでフライパンの底についている肉のうま味を溶け込ませる。ぐつぐついってきたら、火を落として少々煮詰めてとろりとさせる。もう一度、塩コショウで味を調え、肉の上からたっぷりかければできあがりだ。付け合わせはジャガイモのソテーやゆでたサヤインゲンがいい。ワインは、季節柄ボージョレ・ヌーヴォーにしようかな。(真)
フィレ・ミニョン 600~800グラム、ニンニク(大きさ次第で)10~15片、液状の生クリーム150cc、水500cc、バター大さじ2杯、塩、コショウ。
●filet mignon フィレ・ミニョン三品
上の欄の料理をカレーに変えてみたらどうだろう。ニンニククリームを入れるときに、同時にカレー粉とココナツミルク適量を足すだけでよい。これを肉の上からかけ、さらにコリアンダーの葉をきざんだものを散らせば香りがよくなる。付け合わせはもちろんごはん。あったらライムチャツネも添えたい。
檀一雄は、『檀流クッキング』の中でブタヒレの一口揚げを紹介している。フィレ・ミニョンは輪切りにしてから、食べやすい大きさに切り分けて塩コショウし、おろしたショウガやニンニク、酒で下味をつける。これに泡立てた卵の白身に片栗粉を混ぜ入れた衣をつけて、低めの温度で、焦げ目がつかないように揚げていく。上品なごちそうだ。輪切りにしてから、酒、しょう油、ゴマ油などをからめ、さらにショウガやコショウでピリッとさせ、フライパンで焼く和風も、熱いご飯にうまいものだ。
●déglaçage
今回のレシピのごとく、フライパンなどの底にこびりついている肉や魚のうま味を、液体を注いで溶け込ませることをdéglaçageという。おいしいソースを作るときに大切な手順の一つだ。前回のレシピでは、チキンの胸肉を焼いたフライパンに白ワインとレモンの搾り汁を加えてデグラサージュ。ステーキなどを焼いた後に、赤ワインなどを加えてデグラサージュし、同時にみじん切りにしたエシャロットを加え、塩コショウ。最後にバターでとろりとさせれば素敵なボルドー風ソースになる。
●Les 150 tables de la jeune cuisine
創意工夫に溢れたシェフの美しい料理を味わってみたいという人におすすめしたいレストランガイドだ。オヴニーで紹介されている店よりはかなり格が上でちょっと高くつくが、フランス全国から150の名店が紹介されている。パリは、Mon Vieil Ami(4区)、Flora(8区)、L’Oursine(13区)など19軒。各シェフお得意の料理など、読んでいるだけで思わずつばを飲みこんでしまう。そしてそれぞれお気に入りのワインが、醸造元の住所といっしょに掲載されているのも役に立つ。(真)