●The Brown Bunny
ヴィンセント・ガロの傑作。オートバイをバンに乗せ、カリフォルニアに向かうバッド(ガロ自身が演じる)。車の運転席から見える国道、砂漠、都会…明け方、かんかん照り、雨、夕闇…がボクらの心にも焼き付いていく。すれ違う、花の名を持った女たち…近寄りたいけれど、コトバを交わすと傷つけ合いそう。LA郊外に住む恋人デージーの家のドアをノックする。「もう誰も住んでいないよ」という隣人の声。そしてモーテルの白壁を背に現れるデージー(クロエ・セヴィニーが悲劇的な美しさ!)。二人のためらいがちなつぶやきが、愛憎こもごものフェラチオにまでのぼりつめていく…孤独の深さ! 人生は絶望の縁を疾走するロードムービー。(真)
●Monster
『The Hours めぐりあう時間たち』のニコール・キッドマン同様、醜女メイクでオスカー主演女優賞獲得のシャーリーズ・セロン。15キロ体重を増やし、実在の全米初の女性シリアル・キラーの素顔に迫る。娼婦アイリーンは、バーで世間知らずのレズビアン、シルビーと出会い意気投合、すぐに二人は恋に落ちる。一緒にいるためにお金が必要となるアイリーンは路上で客をとるが、正当防衛から殺人を犯す。それは予期せぬ連続殺人の幕開けだった…。本作はひと言でいって「顔」の映画。カメラはアイリーンの表情を近くから執拗に追う。そして彼女も鏡に向かい自分の顔を確認し続ける。モンスターというより、苦悩の時がしわとなり刻まれた疲れた女の顔を。(瑞)
●La Grande Seduction
『Les Invasions Barbares みなさん、さようなら』が、セザール賞を始め各賞に輝いたことで注目のケベック映画。本作は、本国で『Les Invasions…』以上のヒットを記録したとか。寂れた島の住民は若い医師に住みついてもらうよう、全員参加の連携プレーで島の魅力のアピールに全力を注ぐ。素朴で過激な島民の奮闘が何とも微笑ましい。確かな演出に安心して笑える、社会派ヒューマン・コメディー。(瑞)
●Viva Laldjerie
テロ脅威下のアルジェ。写真屋で働くグセムは、医者との煮え切らぬ愛人関係にうんざり。娼婦フィフィは、妹のように彼女の世話をやく。グセムの母は、キャバレーの歌手であった過去に思いを馳せる。身勝手な男たちが築き上げた社会のルールの中でもがきながらも、出口を探し続ける現代アルジェリア女性たちへの熱いオマージュ。
パリを拠点に活動するナディール・モクネッシュ監督の長編第ニ作。(瑞)
Monica Bellucci
「美しすぎて女優としては成功しないだろう」。銀幕デビュー時、本国イタリアで4ページにわたる不名誉な新聞記事が掲載されたモニカ・ベルッチ。最上級の美貌の持ち主にしかわからない悩みもあるのだろう。
1968年9月30日生まれ。大学で法律を学びながら、モデルとして成功をおさめる。90年にTVドラマで女優デビュー。92年、コッポラ監督の『ドラキュラ』を機に外国進出。96年『アパートメント』、97年『ドーベルマン』で人気を獲得。後に両作品で共演したヴァンサン・カッセルと結婚、フランス映画界との結びつきを深くする。その後は『マレーナ』、『ジォーダンの獣』、『ミッション・クレオパトラ』、『マトリックス』など、話題作に出演。持ち前の美貌を武器にした役が目立つ。ポーカーフェイスぶりを際立たせるきりっと締った唇に、ジャンヌ・モローのへの字口のような凄みが加われば、彼女の女優としての将来がさらに開けていくような予感がする。
現在公開中の作品は、カッセルと共演の『Agents Secrets』、メル・ギブソン監督の『La passion du Christ パッション』。今後はテリー・ギリアム、スパイク・リー監督たちの新作の公開が控える。現在、カッセルとともにお腹の子どもの誕生を待ちわびているところのよう。(瑞)