●Wanda エリア・カザンの妻で女優のバーバラ・ローデンがメガホンを撮った最初で最後の作品がリバイバル。この作品に惚れこんだイザベル・ユッペールが新たに版権を買い取りニュープリントで甦った。 夫に離別され、二人の子供の親権もなく、職も失い、わずかばかりの小銭の入った財布の中身もすられ、という失うものが何もないワンダの人生を縦軸に、行きずりの男たちと体を合わせるワンダがペンシルバニアの場末のバーで偶然に知り合った男と知らず知らずのうちに犯罪に巻き込まれ、逃避行を続けるという横軸が織り合わされる、70年代のフェミニストがシビレをきらすようなお話。といっても脚本を担当したのは当のバーバラ・ローデン本人なんだから、ちょっと頭の弱い、でも素直なかわいい女というのは男性だけではなく、女性のファンタズムでもあるんだなぁ。(百) |
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●Lost in la Mancha この作品は、テリー・ギリアムが10年以上構想を練って映画化にこぎつけた『ドン・キホーテ』のメイキング・オブ(とはいえ、作品自体が完成されなかったからノン・メイキング・オブになるのかな?)。ぎりぎりの予算で準備は進み、クランクイン! と思いきや、悪天候、主演J・ロシュフォールの病などの困難にぶつかり、撮影は中止をやむなくされる。映画は独りでは作れない。大勢の裏方の辛抱強い仕事に支えられている。その傍らで、ギリアム自身は子供のように自分の夢が実現されるのを、目を輝かせて待っている。監督のK・フルトンとL・ぺぺはギリアムの『12モンキーズ』(’95)のメイキング・オブも発表している。ドキュメンタリーにおいては、撮る側と撮られる側の信頼関係が重要なカギになる。これなくしては、何も伝えられない。(海) |
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●Soy Cuba 日本では1968年に『怒りのキューバ』という題名で公開されたこの作品は、1964年にソ連とキューバが共同製作した後、1992年まで欧米では未公開だった。キューバ革命にまつわる4つのストーリーは、革命前のキューバ支配国アメリカの批判にもつながっている。労働者、農民、学生たちの不満はつのり、若い農民とゲバラに似た革命闘士が合流するラストシーンが印象的だ。革命政府のプロパガンダと受け取れる部分は多い。が、1958年に『鶴は翔んでいく』という作品でパルム・ドールを獲得した監督ミハイル・カラトーゾフは、キューバ人の出演者たちを、社会主義の硬さを取り除いた繊細な演出で詩的に映し出すことに成功している。(海) |
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●パリ、8月の映画 ラ・ヴィレットの野外映画祭がキャンセルされてがっかり。でも、8月には他にも催しが用意されている。 cinema au clair de lune 6日から24日までパリあちこちの野外で、ゴダールの『アルファヴィル』(12区)、ルビッチの『青髭八人目の妻』(1区)など、新旧取り混ぜた作品がゆかりの場所で21h30から上映される。 www.forumdesimages.net l’Enfance de l’art Etrange Festival |
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