2月に宣告された仏民間航空会社エール・リブ倒産による3200人の解雇(地上勤務者千人はエールフランスが採用するが)は、航空業界という先端分野だけに国民に与えたショックは大きい。が、1月以来、米イラク攻撃をめぐる喧騒の裏で、フランス各地の工業地帯でリストラや工場閉鎖による解雇現象が進行している。 その皮切りに、ロレーヌ地方に96年に入植した韓国系大宇ブラウン管製造工場が、1月末に商業裁判所により清算宣告された。その直前の火災で工場の大半が焼失(3月21日、4人の元社員が放火の疑いで逮捕された)。大宇元社長、金氏が韓国の大宇自動車倒産以来、行方をくらませており(リベラシオン紙によると、仏国籍を取り家族と仏在住とか)、組合は労使交渉にあたるべき社長の不在に、やり場のない怒りを爆発させている。 次いで解雇の嵐は、仏北部パ・ド・カレ県はノワイエル・ゴドーにあるメタルロップ製錬所に波及、その閉鎖で830人を解雇。同社は110年前に旧ペナロヤ社が創業、全国32カ所に同系列の製錬所が散在する。メタルロップ社は95年にスイス系仲買業・重軽金属製錬業グレンコール社が買収したが、近年、仏・独・伊・ベルギーと軒並みに工場を閉鎖。ノワイエル・ゴドー製錬所の労組はスイス本社に労使交渉を要求したが梨のつぶて。勤続20~35年、一夜にして職を失った作業員らは、運河に塩素や硝酸塩を投げ入れるとまで怒り叫び、絶望のどん底に。 同製錬所は70年代まで鉛の粉塵を1日2トン、閉鎖時も1日80kg(基準値の千倍)を放出し、数ヘクタールの空地には鉛を含んだ数万トン の泥土や廃棄物が堆積しており、汚染除去費用に1~3億€が必要とされている。鉛中毒による百数十人の工員死亡者だけでなく、周辺で暮らす2、3歳児の10%は鉛血症に罹っているという。被害者家族の告発と労働者の利害が対立してきた工業地帯の一つといえよう。 鉄鋼業界世界1位のアルスロール社も2010年までに仏・独・ベルギーの4つの製鉄所を閉鎖し、6450人(仏1500人)の解雇を予定している。アルミの大手ペシネー社も地方の数工場の閉鎖を計画中。99~02年に4千人を解雇した武器産業のGiat Franceもさらに削減を計画。そして北東部の繊維業、南仏のハイテク産業、通信業界(フランス・テレコムはリストラ15万人のうち半数は国内で削減計画)と、基幹産業の脱工業化によるとみられる第二次産業労働者の減少化が進んでいる。 80年代に労働力人口の24.5%が工業労働者だったのが、2001年には16.6%に減少(170万人減)。鉄鋼から繊維、化学工業まで、グローバリゼーションのためだけでなく、市民のエコロジー運動の高まりからも、これらの環境公害産業は、低賃金で、公害防止規制もないにひとしい第三世界に移りつつあるようだ。 フランスはますます第三次産業に依存し、チーズ・ワイン他、芸術や観光、香水、モード、第七芸術の映画などに頼っていかねばならないのだろうか。 (君) |
2002年度失業率 9.1% 全失業者数2 724 000人 + 4.8% 平均上昇率 |