Sauté d’agneau au basilic
今年の夏は、1週間マルセイユに滞在。「ピーズ」と呼ばれる名物のピザ、その焼きたてをふーふーいいながら食べる楽しさも満喫したが、ちょっと気のきいたワインバーで食べた、バジリコがたっぷりと散らしてあった子羊のソテーの味も忘れられない。さっそく再現です。
4人分として、子羊の頸肉や肩肉など、骨をはずして角切りにしたものを600~700グラム用意する。少し脂身がついているくらいの方が、おいしくでき上がる。
タマネギ中2個の皮をむき、四つ割りにする。トマト5個は湯むきしてから、やはり四つ割りにし、種の部分をのぞく。ニンニク5片は二つに割ってから、芯にある芽の部分をはずす。
大きめのソトゥーズやフライパンにオリーブ油をとり、中火にかけて熱くなった、あらかじめ塩、コショウしておいた子羊の肉を重ならないように置く。肉にまんべんなく焼き色がついたらとり出し、グリルにでものせて余分な油を切っておくことにしよう。
そのソトゥーズ(洗ってはいけません!)にタマネギとニンニクを加え、しばらく炒めてタマネギが透明になってきたら、肉を戻す。ここでトロミがつくように、小麦粉大さじ1杯を全体にまぶして混ぜ合わせ、辛口の白ワイン200ccを加える。木のへらなどを使ってソトゥーズの底についているうま味を溶けこませるようにしたい。白ワインが半分くらいの量になるまで煮詰めたら、トマトとニース産の小さな黒オリーブ100グラムを入れ、タイムを加え、水を肉がすっかりかぶるように注ぐ。コトコトと沸騰してきたら弱火にしてフタをし、ときどき全体を混ぜ合わせながら1時間ほど煮込んでいく。
ソースがおいしそうな色になっているだろう。その上から大きめにきざんだバジリコをたっぷりと散らし食卓へ。付け合わせはごはんが一番だ。ワインは、バンドルの年代物の赤などがあったら文句なしだが、予算がない人はコット・ド・プロヴァンスの赤。(真)
ピストゥーを作ってみよう。
オリーブ油、バジリコ、ニンニクの香りが素晴らしいピストゥーpistou、スープに加えたり、パスタと和えたりしたい。
すり鉢に2つに割って芽をとったニンニク4片をとり、丁寧にすりつぶす。細かくきざんだ1把分のバジリコの葉、オリーブ油大さじ2杯を加え、混ぜ合わせるようにしながら、濃緑色のなめらかなペースト状になるまで擦り続ける。少しずつオリーブ油を(4人分として全体で150ccくらい)足していく。下ろしたパルメザンチーズをたっぷり加え、塩とコショウで味を調えればでき上がり。もちろんミキサーを使えばあっという間。
スパゲッティ4人分をアルデンテにゆで上げてボールにとり、すかさずこのソースを絡めて食卓へ。(真)
●トマトの皮のむき方
野菜や果物の皮を湯むきすることをフランス語ではmonderという。トマトを湯むきにする時は、ヘタの部分をえぐり出すようにし、沸騰している湯に入れ、10秒ほどたったら取り出し、冷水につけて熱をとってからむいていく。よく熟していても身がしっかりしているトマトを選びたい。熱を加えすぎると、身がくずれてしまうので要注意。
●オリーブ油
地中海料理に欠かせないオリーブ油は、風味が素晴らしい、消化にいい、熱にも強い、酸化しにくいなどの長所が認められ、フランスをどんどん北上中。サラダ、炒めもの、煮もの、揚げものなど広範囲の料理に向いているので、オヴニーのレシピの中だけでなく、家庭料理に使われる回数も急増しているのだ。地中海産だけに、ニンニク、バジリコ、タイム、ローズマリー、オレガノ、唐辛子などとの相性がいい。
オリーブ油の瓶のラベルに “vierge” あるいは “première pression à froid” と表記してあったら、化学処理や加熱処理なしの一番搾りという意味で上等品。さらに “vierge extra” とあったら酸度1%以下の極上油だ。これにもスーパーなどで売られているブレンドもの(1リットル6euros前後)から、産地で瓶詰めにされワインのシャトーに匹敵するものまでさまざま。後者は値段は倍以上になるが、産地特有の風味を味わうことができる。
台所のフランス語
●suc, déglacer
“suc” は、調理している間に肉から流れ出る汁のこと。フライパンなどの底にカラメル化して固まった “suc” を、ワイン、コニャック、だし汁などの液体少量を加えて溶きのばすことは “déglacer” という。レシピ本には “déglacer ensuite avec du vin blanc afin de récuperer tous les sucs.” などと出てくる。
●dégermer
germeは芽のことで、消化に悪いニンニクの芽や、毒素を含んでいるジャガイモの芽などをとりのぞくこと。