Cuisses de grenouille à la provençale
英国人は、カエルを食べるフランス人を “フロッグスfrogs” と少々軽蔑ぎみに呼ぶ。カエルのモモ肉は、トリ肉を思わせる繊細な味わいなのに、「生物の授業の解剖を思い出す」と敬遠する日本人も多い。惜しいなあ! 最近は、冷凍食品コーナーでビニール袋入りのものが売られている。一人当たり1ダースはほしい。室温でゆっくり解凍したら、さっと水洗いし、クッキングペーパーで水気をとり、牛乳に20分ほど漬けておきましょう。
次はプロヴァンス風トマトソース作り。まず玉ネギ1個をみじん切りにし、オリーブ油で透明になるまで炒めたら、やはりみじんに切ったニンニク2、3片を加える。しばらく炒めたら、白ワイン1カップを注ぎ、半量になるまで煮詰め、トマトを加える。トマトは、完熟トマト4個を湯むきしてみじんに切れば文句ないが、ピュレ状態になっているトマトの缶詰を利用してもいい。この場合300グラムほど加えます。砂糖ひとつまみ、塩、コショウ、ブーケ・ガルニを入れ、沸騰したらフタをして弱火で煮ていく。とはいえ、スパッゲティ用ソースほどには煮詰めず、トマトのつぶつぶが残っている程度に軽く仕上げたい。
カエルをざるにとり、一匹ずつ、塩とコショウを混ぜ込んで置いた小麦粉をまぶし、余分な粉をはたく。なるべく大きなフライパンにたっぷりオリーブ油をとり、カエルを加え、途中でひっくり返し、色よくカラッと炒め上げる。6、7分くらいのものだろう。フライパンが小さかったら2度に分けて炒めます。網杓子などを使ってとり出し、熱々にしておいた大皿に盛り付け、きざみパセリをたっぷり散らし、レモンを添える。
フライパンの油を捨て、白ワイン少量を加え、底にこびりついているうまみを溶けこませたら、トマトソースに加える。このソースをカエルの上からかけたり、別に添えたりして食卓へ。熱いうちに手でつまんではソースにひたし、勢いよく食べていきましょう。ワインは南仏のキリッと冷やしたロゼで決まり。(真)
●カエル grenouille
ベルトリッチ監督『1900年』の主人公、オルモとアルフレードの少年時代…小川でカエルを次から次へとつかまえてはヨシの茎に刺しつらねていくシーンが忘れられない。田園のムーンとするような草や小川の匂い、カエルのヌルッヌルッとした触感、つかまえたときの幸福感。そしてそのカエルたちは、次のシーンでトスカーナ風においしく調理される。
日本で食用ガエルというと、北米産の20センチにもなる巨大な牛ガエルのことで、フランスでもgrenouille-taureauと呼ばれ、食用にキューバや米国から輸入されたものが市販されているが、フランス人が好んで食すのは、デリケートな味のgrenouille verte(トノサマガエル)。オルモ君とアルフレード君がつかまえていたのもこのカエル。アルザス地方、ポワトゥー地方、リヨン近辺の名物料理として登場する。
料理の本にカエルのさばき方が出ている。 訳してみると「首の皮のところに包丁を入れ、尻に向かって引っ張るようにしてはぐ。モモ2本が離れないように、背骨を切断する。水かきを切りとる」。カエルが生きたままかどうかは明記してないが、どのみち台所は戦場と化しそう。こうして切り取られたモモ肉は、きれいに洗われて、以前は串刺しの状態になって魚屋の店頭に並んでいたものだが、最近はアジア、東欧から輸入された冷凍ものが幅をきかせている。
カエルのモモ肉は、白ワイン煮、から揚げなど、おおむねトリ肉料理に準じて調理すればいい。神経質そうな人がいたら、火を通してから骨を取り除いた形にする手もある。から揚げにするときは、白ワイン+パセリのみじん切り+おろしニンニク+塩+コショウなどのタレに1時間ほど漬けてから、粉をまぶして揚げるといい。ショウガ風味もうまい。レモンをたっぷりかけてつまみましょう。