すでに1947年、その第二作『La Corde raide』に、「ピカソのせいで、滑稽にならずに画家になることはもはやできない」と書くクロード・シモン。1970年の著書『Orion aveugle』には68年(!)に描かれたピカソの作品を挿入するシモン。1997年の『Le Jardin des Plantes』ではピカソも登場人物の一人とするシモン。二人の接点は、シモンの文学作品が絵画的影響を受けていることにあるだけではない。分野は異なっていても、両者の作品において「性的なもの」が重要な位置を占めることに、その接点はある。 芸術作品においてこの「性的なもの」を賞味するために、精神分析学を知る必要はない、創造者と受け手のリビドーを語る必要はない。ピカソが言うように、我々は「芸術作品を前にして冷めていてはならず」、「揺れ動かされ、かき乱され、そして、想像力によって、あるいは実際に、創造すべき」なのだ。シモンの全作品を貫く性的な描写、そして数々の論説と作品一覧からなるピカソの展覧会カタログが見事に示すように、芸術作品において「性的なもの」が「原的」であるのは、それが、想像力と創造力の最大の糧であるからに違いない。 ピカソにおける性的なものは、絵画である故に見ることはできるが、最後にシモンにおいて想像力と創造力が交差する最も性的な節の一つを引用しておこう。 cette bouche herbue cette chose au nom de bete, de terme d’histoire naturelle ピカソの展覧会に行かずとも、カタログをめくりながら、シモンの小説を読みながら、ひとり、想像力は拡がる…。(樫) |
*Claude Simon: La Route des Flandres (p. 39) 1960, Ed. de Minuit, coll. “double”, 230p. 49fr
*Picasso ertique, editions de la Reunison des musees nationaux, 2001, 368p., 290fr *Picasso Erotique”展: 5/20日迄 Jeu de Paume |
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●てがみアート—手芸でつづる日仏往復書簡 刺しゅうに新しい世界を求めている小倉ゆき子さんとファニー・ヴィオレさんが10年間交わした手紙集。やはり二人が得意とする針と糸が大活躍しています。 ポンピドゥ・センターのはがれた青いペンキを花びらに見立てた便り、「貴女の背中」宛に送られた鯉のぼりの折り紙、ラップランドの旅先からの便りは、その土地の地図にミシン刺繍でメッセージ (封筒も地図)、イカの甲にビーズなどを縫いとめ、ゆするとかすかに音がする「海から来た音」便り…。フランスと日本の間を行き来した素敵な友情がそのまま「形」をとった手紙たちです。(真) *工作舎発行 本体3200円+税 パリのジュンク書店でも販売中。 |
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