Gratin de haddock aux lentilles
シナリオ作家のフレッドさんの家に招待されると心が弾む。奥さんともども料理上手で、いつも工夫のあとがうかがえる料理を味わえるからだ。きょうは熱々のグラタン。取り分けてもらうと、下からレンズ豆、アドック (薫製魚)、長ネギと三層になっている。サスガ! 口に入れるとかすかなカレーの風味…。おしゃれなビストロなどで出てきそうな一品だ。
アドックはキロ120フラン前後となかなかの値段だが、気張って4人分として400グラム買ってくる。
まずレンズ豆を煮る。4人分として300 グラム、さっと洗ったら大鍋にとり、たっぷり水を張る。沸騰してきたらアクをとり、塩、コショウ。さいの目に切ったニンジン半本、丁字を2本刺した玉ネギ1個、ブーケ・ガルニを加え、弱火で煮ていく。レンズ豆が新しいか古いかによるが、45分くらいでちょうどいい固さにゆで上がるはずだ。
この間に、長ネギの白い部分と浅い緑色の部分だけを500~800グラム (多いほどうまい) せん切りにする。フライパンにバターをとり、弱火で長ネギをトロトロになるまで炒めていく。生クリーム100ccを加えてしばらく火を通し、カレー粉少量、塩、コショウで味を調え、おろしチーズ約100グラムを混ぜ込みます。
鍋にアドックを入れ、それがかぶるように牛乳を加える。弱火。沸騰したらすぐにアドックを取り出し、適当な大きさにむしれば、準備完了。オーブンの目盛りを6か7 (220度前後) に合わせて点火。
玉ネギとブーケ・ガルニをのぞき、ゆで上がったレンズ豆をザルにとる。オーブン皿にレンズ豆を敷き、生クリーム100ccとカレー粉少量を混ぜ込む。その上にアドックを均等に並べ、長ネギのクリーム煮で覆い、熱々になっているオーブンへ。表面に軽く焼き色がついてきたらでき上がりです。
フレッド君は、サンセールの白を開けてくれた。メルシ・ボクー。(真)
●レンズ豆とポーチドエッグのサラダ
上記のレシピのごとく、レンズ豆を煮ていくが、サラダには少し歯ごたえがあるくらいの方がうまい。一人一人の皿にとり、真ん中をくぼませておく。今度はポーチドエッグ作り。新鮮な卵を使いたい。そうでないと白身が流れてうまくまとまりません。鍋にたっぷり水をとり、沸騰してきたら、白身が凝固しやすいようにかなりの量のビネガーを入れる。卵を茶碗に割り落としてから静かに熱湯に加える。再沸騰してきたら、火を弱くして、黄身の固さの好みによるが3~5分火を通す。穴杓子écumoireですくい上げて水気を切り、レンズ豆のくぼみに置きましょう。エシャロットをたっぷり加えたビネグレットソースをかけ、パセリを散らす。まだ温かさが残っているうちに味わいたい。
●アドック haddock
アドック (本場の英国ではもちろんハドックと発音) は使lefin (スケソウダラの一種) の薫製で、オレンジ色をしている。牛乳で5~10分かけて静かにゆで上げたものに、レモン風味の溶かしバターをかけて食べるのがいちばんだ。付け合わせはゆでたジャガイモ。アドックより大きめの、単にpoisson fuméと呼ばれる薫製魚もあるが、これはマダラの薫製で、値段は安いが味はずいぶん落ちる。
●レンズ豆 lentilles
レンズ豆は、マシフ・サントラル 山地の火山灰地で作られている、小さめで濃緑色のlentilles vertes du Puyがおいしい。
カロリー値が高いだけでなく、リン、鉄分、ビタミンBにも富んでいる。
●台所のフランス語
●pocherpocher le haddock sans ébullition
pocherpocher le haddock sans ébullitionとあったら、沸騰させずにアドックをゆでること。レシピにpocherと書いてあるのに、グツグツ沸騰させたりしたら、材料がこわれたり、すが入ったり、パサパサになったりするので、要注意。 沸騰寸前の液体の中でdans un liquide fremissant 火を通すことが肝心です。魚のクネルとか卵とか果物とかデリケートな食材の調理にむいている。pocher un oeufというのは、ポーチドエッグを作ること。blanchir という動詞が使われていたら、遠慮なしにグツグツ沸騰させながらゆで上げることです。
●fondre
fondreというのは、長ネギ、玉ネギ、オゼイユ (スカンポ)、トマト、アンディーブなどを、バターや油を使って、ごくごく弱火で炒めていくことです。材料に色がついてはいけません。かき混ぜてはフタをし、水分が蒸発しないようにすることが大切です。こうしてトロトロの状態になった野菜をfondueと呼ぶ。グリュイエール、ボフォール、コンテなどのチーズを白ワインと一緒に溶かして食卓に出し、パンに絡めながら味わうのは、サヴォワ風フォンデュfondue savoyarde。