Flan de poireaux
poireau (ポワロー) と呼ばれるフランスの長ネギは、日本のものよりずっと味が柔らかく、きざんで薬味にするには物足りないが、塩ゆでにしたものを冷ましてからビネグレットソースやマヨネーズで食べると、どこか甘みがあって病みつきになりそうだ。11月に入ると、フランス人が大好きな根に近い白い部分blanc de poireauがどんどん太く長くなり、上手に調理すると、「貧乏人のアスパラガス」と呼ばれていることに納得のいくうまさになる。
まず下の欄を参照しながら、pâte à foncerを作り冷蔵庫で2時間ほど寝かせる。これを3ミリほどの厚さに丸くのばし、直径26センチほどの型に収めます。底をフォークでつついてから、目盛り6 (200度) のオーブンに入れて10分ちょっと空焼き。 色がついたら焼きすぎで、表面がしっかり乾いた状態になればいいのです。冷まします。
長ネギは白い部分と、その上の薄緑色の部分だけを800グラム、丁寧に洗ってから半分に割ってせん切りにし、バター大サジ1 杯でしんなり柔らかくなるまで炒めていく。焦げつかないように弱火。水気を切るようにして取り出します。
次はモルネー・ソース作り。といってもベシャメルソースを400cc作ってから、そこへおろしたグリュイエール・チーズ100グラムを混ぜ入れてできあがり。
型にまずモルネー・ソースを半分敷いたら、その上に柔らかく炒め上げた長ネギを広げ、さらに残りのソースでおおい、おろしたグリュイエール・チーズを全体に振りかけ、バターをちょんちょんと置いて、目盛りを8 (270 度) に合わせて熱くしておいたオーブンに入れます。表面にきれいな焼き色がついたら完成。
チーズの香ばしい香りと長ネギの優しいうまさが一つになった素晴らしいアントレだ。(真)
●台所のフランス語
塩味のパイやキッシュ用には、折り込み生地pâte feuilletéeとpâte à foncerがある。後者はpâte briséeとほとんど同じ作り方だが、砂糖を加えず、塩が少々入る。”à foncer” というのはパイやキッシュの底を作るという意味。イチゴのパイのように火を通さないものとか、今回のように強火で一気に焼き上げるためパイの皮に十分火が通らないような場合は、あらかじめパイ皮を空焼きcuire à blancしておきます。
●pâte à foncerの作り方
まずバター125グラムを小さく切り分けて室温においておき、柔らかくする。大きめのボールにふるいにかけた小麦粉 250グラムをとり、真ん中をくぼませて、柔らかくなったバターと塩小サジすり切り1 杯を入れ、指先を使って混ぜ合わせ、そぼろ状になったら、水大サジ2、3 杯を加えて、両手でさっとこね合わせ、まとめ上げるような感じで玉にする。練りすぎるとできあがりが固くなるので注意。冷蔵庫で少なくとも2時間寝かせます。
●poireau à la vinaigrette
なるべく白いところが長いポワローを選び、やや緑がかってきた箇所で切りそろえる。根も切り落とし、丁寧に水洗いします。大きめの鍋でフタをせずに塩ゆで。再沸騰してきたら火を落として、ネギがバラバラにならないように注意したい。フランス人は30分ほどかけて、くたくたっとなるまで煮ます。これを取り出して、すっかり冷まし、シンプルなビネグレット・ソースをかけて食べる。好みではマヨネーズもいいでしょう。
●poireau 長ネギ
みずみずしくツヤがあり、緑の葉が広がっていずすっと伸びていて、白いところblancがなるべく長いものを選びましょう。ほとんどのフランス人は白っぽいところしか食べないので、黙っていると、八百屋さんはさっさと緑の葉を切り落としてしまう。もったいない。白いところも混ぜてきざめば、少々物足りなくてもウドンやソバの薬味になるし、小さく切ってからジャガイモやニンジンなどと煮込んでミキサーにかければ、おいしい野菜のポタージュ。葉の間に砂や土が入り込んでいるので、丁寧に水洗いすることが大切だ。
●cive 細ネギ
えぞネギなどと親類の細いネギ。薬味に最適だし、炒め物もうまい。ぬたにしてもいい。アンチーユ諸島、レユニオン島などのクレオール料理にもたくさん使われるネギです。中華食品店で見かけることが多い。
●ciboulette ごく細ネギ
さらに細いネギでアサツキに近い。ここまで細くなると、野菜というよりはハーブ。きざんでサラダにかけたり、ヨーグルトソースに加えたり、オムレツにいれたりするといい。かすかにニンニクっぽい香りがする。鉢植えでもよく育ち、春になると小さな手まりのような紫色の花をつける。