アリーグルの露店市:
Place et rue d’Aligre 12e M°Ledru-Rollin
月曜を除く毎日13時過ぎまで。
ドリュ・ロラン大通りに数年間住んでいたことがあるけれど、何よりの楽しみは、近くにあるアリーグル広場の市場に出かけていくことだった。近くに来ると、買い物するつもりがなくても足が向いてしまう。きょうはよく晴れた土曜日の朝、その市場の雑踏にもまれながら歩きたくなってしまった。
市場といっても、1843年に建てられ、パリでは一番古いという屋根付きのボーヴォー市場と、その前とアリーグル通りに立つ朝市の二つからなっている。すでに18世紀末には、近郊の農家から、荷車などで持ち込まれた肉や野菜、豆や穀類、パン、生きた豚や羊、鶏などであふれ、多数の客だけでなく、豚などを殺す人、肉の品質を検査する人などでごった返していたという。ボーヴォー市場ができた後も、周りに安食堂やくず屋や古物商の店ができ、レアールに匹敵する勢いで「パリの第二の胃袋」と言われるまでになった。
1871年のパリ・コミューンの時には、フォーブール・サンタントワーヌ通りで働いている職人や労働者がアリーグル広場に集結し、政府軍に激しく抗戦した。現在でもそうだが、当時もスペイン、ポルトガル、イタリア、北アフリカからの移民が数多く住んでいた土地でもあった。みんなで集まって祭日を祝い合ったり、食事をしたり、慈善バザーを開いたりすることも頻繁だったという。
そのフォーブール・サンタントワーヌ通りは、バスチーユ広場から地下鉄ルドリュ・ロラン駅まで、おしゃれな若者向けのファッション関係の店や斬新な内装のカフェが並んでいるが、そこから一歩入ったアリーグル通りは別世界。とにかく混み合っでいる。年齢さまざま、肌の色さまざまな男女が、かごや袋を持ち、あるいはキャディーを引きながら行ったり来たり。両側にみっしりと軒を並べる露店の、野菜や果物を見比べ、少しでも安いのはないかと一心不乱。そして、主にマグレブ系の男たちが、「イチゴ大安売り!」などと大声をあげる。マンゴーひと切れを差し出して、味見もさせてくれる。そのブルキナファソ産のマンゴーがとろけるようなおいしさで、ついつい3個も買ってしまった。どうしてもそうなってしまう。買い物する気がない人も、念のため買い物袋を持って行った方が安心だ。
アリーグル通りの30番地には、中東の食材がほとんど揃う「Sabah」がある。さまざまな香辛料や穀物類、目が回りそうな品数のアーモンド、ピスタチオなどのナッツ類。バラのつぼみを乾燥させたものは料理の香りづけ、と教えてもらった。こんなに発見の多い店はちょっとない。
広場には、小さなのみの市もある。以前はガラクタ市、と悪口を言われていたものだが、最近は、食器類になかなかの掘り出し物があるので無視できない。推理小説なども、びっくりするほど安いから、またまたついつい買ってしまうのだ。これだからアリーグル市場はこわい。
そろそろアペリティフタイム。きょうはきれいに晴れ上がっているから、日がよく当たるテラスでパスティスをやりたいなとカフェに向かったら、その前で、ボクらがよく飲みに行く「ラ・リベルテ」の常連のおじさんが、ギターを弾きながら渋い声でブルースを歌っていた。(真)