冬の寒さがすぐそこまで来ている。体がまだ慣れていないからちょっとこたえる。こんな時には、肉の煮込みが食べたくなる。それも、ちょっとこってりとした風味のもの。というわけで、肉屋で子牛のあばら肉tendronを4枚、少し厚めに2センチくらいの厚さに切ってもらった。これをさらに真ん中で二つに切り分けてもらうといい。これを白ワインで煮ていくのだが、トマトとニンニクの風味をきかせるので、マレンゴ風と呼ばれている。
玉ネギはみじん切り、ニンニクは皮をむいてから押しつぶしておくだけでいい。子牛肉は両面に塩、コショウ。
ココット鍋を強火にかけ、オリーブ油とバターを入れ、それが熱くなったら肉を入れる。両面にきれいな色を付けたい。鍋が小さめなら、この作業、2回に分けてやる方がいい。肉に焼き色が付いたら、ボクはここで肉を取り出し、健康にいいように余分な脂を捨てるけれど、鍋を洗ってはいけません。鍋を火に戻し、オリーブ油をちょっと足してから、玉ネギを加え、ヘラでかき混ぜながら鍋の底に付いている肉のうまみを玉ネギに移すようにする。ニンニクを加え、肉を戻したら小麦粉を振りかけ、全体を混ぜ合わせながらしばらく火を通す。この小麦粉が後でとろみになる。白ワインを加え、濃縮トマトも混ぜ入れ、肉が8分目ほどかぶるまで水を足す。ブーケ・ガルニを加え、軽く塩、コショウ。沸騰してきたら火を弱くし、ふたをして1時間半ほど煮込んでいく。
肉がすっかり柔らかくなったら、表面に浮いている脂を丁寧にすくって取りのぞく。クッキングペーパーに吸わせるようにしてのぞくのも手だ。マッシュルームの足をとってからさっと洗って、二つや四つに切り分けて加え、数分火を通したら、塩、コショウで味を調え、刻んだパセリをたっぷり散らす。付け合わせは、柔らかめにゆで上げたジャガイモだ。バゲットパンを薄く輪切りにしてから油で揚げたクルトンを添えるのもおすすめ。ワインは、モルゴンなどボージョレの銘酒にしたい。(真)
4人分:肉1.2kg、玉ネギ2個、マッシュルーム300g、ニンニク2片、小麦粉大さじ2杯、白ワイン300cc、濃縮トマト大さじ1杯、ブーケ・ガルニ、刻んだパセリ大さじ2杯、オリーブ油大さじ3杯、バター大さじ2杯、塩、コショウ
●Marengo
「マレンゴ風」というのはイタリア北部の村Spinetta Marengoから来ている。1800年、ナポレオン率いる軍隊が、この地でオーストリア軍を破った時に、ナポレオン付きの料理長が作った料理にちなんでいる、ということだが、実際にナポレオンが口にしたのは、鶏のから揚げだったとか。現在「マレンゴ風」というのは、白ワイン、トマト、ニンニクを使った料理を指す。子牛肉の他に鶏肉のマレンゴにも人気がある。
●tendron (poitrine) de veau
子牛のアバラ肉のことで、豚肉なら三枚肉に当たる。骨付きで、脂身が走っている。煮込み料理にすると、とろけるように柔らかくなる。骨のまわりを脂が囲んでいる。子牛のブランケットというとふつう肩肉épauleが使われることが多い。アバラ肉はキロ17ユーロ前後、肩肉はキロ27ユーロ前後だ。ひと昔前に、マレ地区のアンパス・ゲメネに「昔風ブランケット」を出す店があった。かなりの値段なのだが、使っている肉は子牛のアバラ肉。ボクらはいつもそれが目当てだった。今でも子牛のブランケットを作る時は、肩肉とアバラ肉を半々にしてもらう。本当は全部アバラにしたいのだが、脂身がきらいな人(主に女性)もいるので半々だ。肉屋さんも「ブランケットにはタンドロンが一番さ!」と断言する。
ところで子牛肉は、ちょっと高めでも、信頼できる肉屋で買いたい。安い子牛肉は、焼き色を付けようと炒めていると、水が次から次へと出てきて、ぜんぜん焼き色が付きません!
●大さじ1杯
ボクが書いているレシピでは、単に「大さじ1杯」と書いてあるだけで、それが「山盛り」なのか、「すり切り」なのか明記してないけれど、どちらですか、という質問があった。フランスのレシピでも「1 cuillère à soupe」と書いてあるだけだ。答えは、液体なら「すり切り」、固体なら「山盛り」ということです。ボクのレシピもそういうことなので、お間違いのないように。