メキシコの大学で教えている友人のMさんが、「鶏肉のチョコレートソースはとってもおいしいよ!」と言う。そこで異国料理第2弾は、まだ未知の、メキシコ風鶏肉のチョコレート風味と思い立った。チョコレートソースのレシピを探し出したが、チョコレートの他に、こんがり焼いたアボカドの葉、落花生、クルミ、アニスなどが入っているらしいことはわかったが、説明が大まかでお手上げ! がっかりしていた時に、友人の家に招かれたら、なんと偶然にも鶏肉のチョコレート風味! さすがにフランス風でチョコレートはかなり控えめだったが、うまい。即座に作り方を教わったので挑戦してみることにした。チョコレートの量だが、入れすぎると甘くなるし、控えると苦みが足りなくなるしと、なかなかむずかしい。本場の味かどうかは保証できないけれど、ボクは100グラム入れたが、とてもおいしくできた!
鶏を、もも肉2つ、胸肉2つ、手羽2つと6つに切り分ける。ココット鍋にオリーブ油をとり、中火にかける。熱くなったら、塩、コショウしておいた鶏肉を加え、軽く焼き色を付ける。小麦粉を振りかけ混ぜ合わせたら、白ワインとチキンのブイヨン(インスタントでもいい)を加える。木のへらで鍋の底にくっついているうまみを溶け込ませ、みじんに切った玉ネギ、小さく切った赤ピーマン、輪切りにしたニンジン、濃縮トマト、バルサミコ酢、八角、シナモン、丁字のつぼみのところを指で粉にして4本分、そして細かく割ったチョコレートを加え、丁寧に混ぜ合わせる。
沸騰したらごく弱火にし、フタをして、途中何度か鶏肉をひっくり返しながら、煮込んでいく。50分もすれば鶏肉は柔らかくなっているだろう。最後に塩とコショウで味を調え、タバスコソースを好みの量加えて、辛味をつける。付け合わせはマッシュポテトが適している。
そして飲み物は、メキシコ人もよく飲むというビールも合いそうだが、ボクは、チョコレートと相性がいいボルドーの赤にした。(真)
鶏1羽、赤ピーマン1個、ニンジン2本、玉ネギ2個、濃縮トマト大さじ1杯、バルサミコ酢大さじ1杯、八角1つ、シナモン2本、丁字4本、カカオ分70%のチョコレート100グラム前後、白ワイン300cc、チキンのブイヨン500cc、小麦粉大さじ1杯、タバスコソース、オリーブ油、塩、コショウ
●丁字 clou de girofle
丁字(クローブ)のつぼみが開く前に花托ごと収穫して乾燥したものがclou de girofle。1センチちょっとくらいの長さで、その先に4ミリくらいのつぼみがついている。きつい香りのスパイスなので、使いすぎは避けたい。皮をむいた丸ごとの玉ネギに1、2本刺して、肉のワイン煮などに入れ、肉が柔らかくなったら玉ネギごと取り出す。また、そのままを肉をつけるタレに入れて香りを付けたりすることも多い。インドのミックススパイス、ガラムマサラにも入っている。アクラという干ダラのコロッケの衣にも入るが、こういう時はつぼみのところだけをとって、指でつぶして粉にして加えるといい。ノエル市の名物vin chaudにも、シナモンと一緒に入っている。丁字は健胃剤であるだけでなく、軽い麻酔・鎮静作用もあり、歯痛に効果を発揮する。
●シナモン cannelle
シナモン(ニッキ)は シノニムという熱帯に生育する木の樹皮を乾燥して作られる。サンスクリット語の古文書や旧約聖書にも登場する最古のスパイスの一つ。スリランカ産や中国産が名高い。独特の甘い香り、そしてかすかな辛味がある。フランスでは、肉の煮込みなどにも使われていたが、現在はもっぱらデザートに使われている。果物、特にリンゴの砂糖煮やタルト、vin chaudに入る。中近東、インドやアジアではお菓子に使われるだけでなく、スープや肉料理にも頻繁に使われる。インドのカレーにもなくてはならないものだ。
●vin chaud
熱々のvin chaudは、ノエル市の匂い。寒い時に一番ですね。まず、ワイン1瓶を鍋にとる。八角を1個入れて、弱火にかける。沸騰しそうになったら、無農薬オレンジ1個の皮を薄くむいて加える。砂糖の量は好みだが、少なくても100グラムは加える。シナモン2本、丁字3本、黒コショウ10粒、ショウガ少々なども入れ、少なくとも20分、弱火で火を通す。沸騰させると、ワインのアルコール分とスパイスの香りが飛んでしまうので、気をつけたい。