値段が張ってなかなか手が出ない子牛肉だが、tendronと呼ばれる、脂身が混じって骨ごと切り分けられたアバラ肉は、キロ17ユーロ前後なのがうれしい。このアバラ肉を使ったブランケットは、「à l’ancienne昔風」ともったいぶって言われるくらいに、こってりとうまくファンが多い。今回は、このアバラ肉を、タイムの香りをきかせて、白ワインと一緒にとろけそうになるまで煮込んでみよう。最後に加える緑色のオリーブが独特の風味を作り出す。こういった煮込み料理は、煮直した方がおいしいくらいなので、少人数の家庭でも1キロは買ってくる。1.5センチくらいの厚さに切ってくれるが、これを二つに切り分ける。
ココット鍋にオリーブ油を多めにとって強火にかけ、油が熱くなったら、塩、コショウした肉を入れ、きれいな焼き色がつくまで炒める。一度に入れると油の温度が下がってしまうので、2度に分けてやるのがいい。その時に、油を少々足してしっかり熱くなるのを待つ。
玉ネギを二つに割って薄くせん切りにし、肉を取り出した後のココット鍋に加える。火を中火に落とす。玉ネギが透き通ってきたら、白ワイン、さらに缶詰の水煮トマトを加える。木のヘラでトマトを丁寧につぶしたい。2、3分グツグツさせてから肉を戻す。たっぷりのタイムとローリエの葉数枚を結わえたブーケ・ガルニを加え、フタをして弱火でトロトロと煮ていく。次は緑のオリーブの準備、といっても熱湯の中で1分ほど沸騰させて余分な塩気をとるだけ。
よくソースが絡むように時々肉を返しながら1時間半も煮ると、肉は骨から離れそうなほどに柔らかくなっている。ここでオリーブを加えて味を調え、ごく弱火でさらに30分煮ればできあがり。
これを冷ましてから冷蔵庫に入れ、翌日取り出せば、脂が表面に固まっている。これを取り除いてから、弱火で温め直せば、さらにうまい。コット・デュ・ローヌの赤がよく合う。(実)
4人分:子牛のアバラ肉1kg、玉ネギ3個、白ワイン400cc 、缶詰の水煮トマト300g 、種抜き緑のオリーブ300g、
ブーケ・ガルニ、オリーブ油、バター、パセリ、塩、コショウ
●子牛の肉
まず頭tête。時々その頭がドーンと置いてあることもあるが、骨を取り外してから丸められた状態で売られていることが多い。これはポトフのごとく、大鍋で2時間ことこと煮込む。煮上がったら大皿にとり、卵の黄身が入ったグリビッシュというヴィネグレットソースを添える。頸(くび)肉collierは適度に脂身が混じっているので、ブランケットなどの煮込みに最適だ。ロースcôtesはソテーが一番。もも肉noixは、薄く切ってたたいてからカツにしたり、さっと両面を炒めてから、クリームソースをかければエスカロップ・ア・ラ・ノルマンド。今回使ったアバラ肉tendronは、頸肉同様に煮込み料理に向いている。肩肉épauleは、ローストや煮込み用。すね肉jarretは、骨ごと厚く輪切りにしてトマト風味で煮込めばミラノ名物のオッソ・ブッコ。足piedは、二つに縦割りにしてから牛の赤ワイン煮などに加え、こくを出すのに使われる。
●côtes de veau poêlées
子牛のロースは人数分を少し厚めに切ってもらって、フライパンで焼くのがいい。焼く前に、ロースの両面にまず塩、コショウ。フライパンを中火にかけ、バターを加え、それがすっかり熱くなったらロースを入れる。ロースの厚さによるが焼き時間は12分から15分。途中で一度だけ引っくり返す。焼き加減はミディアムà point、芯がややバラ色という感じです。このロースを熱くしておいた皿にとって、フライパンに残ったバターを捨てる。フライパンは洗わずに、ロースが4枚だったらチキンのブイヨンを1カップほど加え、木のへらを使って、フライパンの底に付いている肉のうまみを溶け込ませる。チキンのブイヨンのかわりに、白ワインにしてもいい。それを半分ほどになるまで煮詰めたら、液状生クリームを100cc注ぎ、よく混ぜ合わせたらソースのでき上がり。このクリームソースに、あらかじめ炒めて水気を出しておいたマッシュルームを加えれば、さらにうまい。付け合わせは、アルザス風の、卵が入っていて柔らかくゆであがるタリアッテレ。フランス人も歓声をあげるごちそう。