カメラは主人公のアデル(アデル・エグザルコプロス)に密着し、彼女から、そして彼女の視点から離れることはない。ごく普通の高校生の暮らし…学校、家庭、ボーイフレンド…。ある日アデルは街で見かけた青い髪をした女性に惹かれる。恋の始まりだ。アデルはついに彼女、美大生のエマ(レア・セドゥー)との出会いを果たす。二人の熱烈な恋愛が始まる。ベッドで二人は何度も何度もオーガズムに溺れる。画家としての野心を抱くエマは、同時にアデルをモデルとした絵を描き、彼女を自分のミューズとして人に紹介する。一方、アデルは平凡で堅実な人生を望み、保育園の先生になる。エマが仕事と野望に傾くなかで寂しさを感じたアデルは、同僚の男性とのアヴァンチュールに走る。エマは激昂、二人の関係に終止符を打つ。
翌年、小学校の教師となったアデルは、地道な日々を送りながらも決してエマのことが頭から離れることはなかった。エマとの再会でやり直しはできないことを思い知らされ、エマの初の展覧会に招かれても自分の居場所のないことを悟ったアデルは、人生の新しい頁に向けて去っていく。これが本年度カンヌ映画祭パルムドール受賞作、アブデラティフ・ケシシュ監督『La Vie d’Adèle アデル、ブルーは熱い色』の粗筋だ。
ケシシュの作品(『身をかわして』、『クスクス粒の秘密』など)は、物語の展開より、そこを流れる時間が重要。その時間を生きる主人公(=俳優)を観客は生理的に受け止めることになる。監督と女優の共犯関係で生み出された本作品だが、パルムドール受賞後、さまざまな物議を醸している。監督の演出の下、身も心も自分を投げ出し作品に挑んだ女優二人に敬意を表したい。(吉)