春が少しずつ近づいてきたけれど、3月はまだびっくりするほど寒い日がある。そんな時は、フランス料理の中でも一番ポピュラーで古くからある料理、ポテを作ってみよう。そのポテは、地方によって入る肉はいろいろだが、必ずキャベツが入ることになっている。今回は、塩漬けの豚の肩肉palette de porc demi-sel、豚の三枚肉、くん製ソーセージが入るロレーヌ風です。
まず、豚の肩肉をゆでて塩出しをする。肩肉なら、肉を入れて再沸騰してから8分から10分くらいのものだろう。網じゃくしで取り出しざるにあける。くん製風味が苦手な人はくん製ソーセージも、同時に3分ほどゆでておくといい。
キャベツは、外側の固い葉をのぞいたら、四つに、芯のところでつながるようにして切り分け、よく洗う。後でブイヨンを味わう時に、あまりキャベツ臭くならないように、下煮する。3分ほど沸騰させたらざるにあけ、蛇口の水でさっと冷やす。
大きいココット鍋などに、豚の肩肉、三枚肉、キャベツ、皮をむいた丸ごとのニンジンとカブ、皮をむいてから丁字を1本ずつ刺したタマネギ、ブーケ・ガルニを加える。水をひたひたに張り中火にかけ、沸騰したら丁寧にアクをとる。粒コショウも加え、火を弱火にし、ふたをして1時間半煮ていく。ここでソーセージと、皮をむいてやはり丸ごとのジャガイモを加え、再沸騰したら、もう30分の辛抱だ。ジャガイモにペティナイフの刃先を刺してみて、すっと抜けるようになったら、ソーセージにも火が通っているし、でき上がり。
網じゃくしを使って肉、ソーセージ、野菜を取り出し、ブーケ・ガルニを捨て、深めの皿に盛りつける。残ったブイヨンはこしてから鍋に戻し、もう一度沸騰させる。このブイヨンを、トーストした田舎パンを添えて最初に味わいたい。そして肉、ソーセージと野菜。いずれも食卓で切り分ける。豚肉のうまみをたっぷり吸い込んだキャベツのおいしさは格別だ。(真)
材料(6人分):塩漬けの豚の肩肉1個、豚の三枚肉500グラム、くん製ソーセージ2、3本、緑キャベツ1玉、カブ300グラム、
ニンジン6本、タマネギ2個、ジャガイモ800グラム、丁字2本、ブーケ・ガルニ、塩、粉コショウ大さじすりきり1杯
●ポテさまざま
ポテは、フランスの各地方で作られている、寒い時においしい田舎風スープ料理。ふつう、豚肉、キャベツ、ジャガイモなどが入る。大鍋に、豚肉の塊やキャベツ、ニンジンなどを放り込んでストーブにかけて畑仕事に出かける。昼時に戻ると、その大鍋から湯気が立ち、肉や野菜が柔らかく煮えている、といった料理だったのだろう。今回はロレーヌ風だったけれど、地方によって、材料が変わってくるのが楽しい。
豚肉で名高いオーヴェルニュ地方なら、塩蔵豚肉、豚の頭半分、ソーセージ、キャベツ、ニンジン、カブ、ジャガイモなどが入る。アルザス地方だと、べーコン、白キャベツ、セロリ、ニンジン、白インゲンなどが入るが、最初に名物のガチョウの脂で野菜を蒸し煮する。フランシュ・コンテ地方なら、名物のモルトーソーセージに、牛肉、豚の三枚肉、それに好みの野菜が入る。ブルターニュ地方だと、子羊の肩肉、ソーセージ、野菜入り。potée de congreという、よくダシの出るアナゴ入りのポテもある。
時間がなくても手軽にできるポテを紹介。肉は早く煮えるソーセージ2種類にする。一つはモルトーなどのくん製ソーセージ、もう一つは柔らかい風味のフランクフルトソーセージ。ブイヨンがいい味になるように、くん製ソーセージは斜に三つくらいに切り分ける。野菜はニンジン、クルジェット、ジャガイモ。ニンジンとジャガイモは、皮をむき、どちらも縦二つに切り分ける。クルジェットは皮付きのまま厚く輪切り。大鍋にトリガラのスープをたっぷりとり(インスタントでもかまわない)、くん製ソーセージとニンジンを加えて火にかける。ニンジンが柔らかくなってきたら、ジャガイモとクルジェットを加える。ジャガイモが煮えたら、すぐに火が通るフランクフルトソーセージを加える。ソーセージが熱くなったら完成。最初に熱々のスープを味わってから、ソーセージ、野菜を味わう。
●塩蔵豚肉 porc demi-sel
保存がきくように塩漬けにされた豚肉が肉屋に並んでいる。肩肉palette、三枚肉poitrine、すね肉jambonneau、スペアリブtravers、耳oreilleなどなど。最近は薄塩なので、大きさ次第で、5分から15分ほどゆでれば、塩出しができてしまう。あとは煮込み料理に入れるだけ。レンズ豆と炊き合わせたpetit salé aux lentillesは、ビストロでも人気の一品だ。