2月20日に公開された『5 Caméras Brisées』、日本では『壊された5つのカメラ』という邦題で公開。『5台のカメラが壊された~パレスチナ~』としてBS 1で放映されている。
これは偶然が必然となったドキュメンタリーだ。パレスチナの農民だったイマードは息子のジブリールが生まれた時にビデオカメラをプレゼントされる。それは同時に突如イスラエル軍がブルドーザーで村に入り農地のオリーブの木をなぎ倒し始めた日だった。イスラエルは一方的に領地を拡げ境界線に壁を築こうとする。先祖代々の土地を理不尽に取り上げられることに村民たちは当然抵抗する。武器など持たない彼らは戦車に向かって石を投げたり身体を張っての実力行使に挑む。イマードのカメラは、息子の成長や家族や友人の姿を捉える一方で、不幸にして皆の日常生活の一部になってしまった抵抗運動を撮る。素手で立ち向かう彼らにイスラエル軍は催涙弾を投げるだけでなく、時に発砲する。映画の冒頭で子供たちの人気を集めていた友人がカメラのすぐ傍らで倒れる。イマードのカメラもやられる。本人も傷を追う。カメラが壊れる度に彼は次のカメラを調達する。カメラが自分や仲間を護ることもあれば逆に標的になることもある。イマードの武器はカメラ、そして執ように記録しつづけること。それが今や彼の使命となった。
2005年から5年間、5つの壊されたカメラと6台目のカメラでイマード・ブルナートはパレスチナ人の魂を内側から記録した。そしてイスラエル人の映画監督、ガイ・ダヴィディの協力で映画を完成させた。「パレスチナ人とイスラエル人は従兄弟同士」のはずだ。本作のラストはハッピーエンディングではあるものの、その後も闘いは続いており、イマードのカメラは回り続けている。公開規模が小さいので追っかけてぜひ観て頂きたい1本。(吉)