先史時代から続く、という名門デュゴジエ・ド・ラ・グロット城主夫妻が、由緒ある一家の歴史を戯曲として披露しようとするその日、 出演予定だったブルガリア人コーラス隊300人が大雪で道を寸断され城までたどり着けない、という悪い知らせが入る。困った…解決策は…と、城主たちが思いついたのが、彼らの目の前にいる人々、つまり私たち観客を、コーラス隊として臨時に起用することだった。
観に行った日は、パリも大雪に見舞われた日で、観客から戯曲のストーリーとの偶然の一致に笑い声があがる。先史時代から中世、フランス革命前と革命後、パリ・コミューンに20世紀初め…と、時代ごとに区切られて面白おかしく歌い語られていく一家の歴史。城主夫婦のバリトンとソプラノ、男女召使いのテノールとアルトが、ピアノを伴奏に会場の笑いと共に響く。ヴェルディ、ビゼー、オッフェンバックなどの歌曲、『ラ・マルセイエーズ』や『さくらんぼの実る頃』、そして20世紀のシャンソンなどの歌詞が時々舞台の壁に映し出されると、それ、私たちの番だ! と観客も喜々として合唱! フランス人がカラオケに興ずる場面に出くわしたことがあるが、あまりに楽しそうな様子に驚いたことがある。集団になると一致団結、和気あいあいとなるフランス人には、こんな参加型のスペクタクルがとても合っているのだ。
作者は城主夫婦役を演ずるジャック・ゲイとラファエル・ファルマン(演出も)。これまでに多くの「歌う」劇に出会ってきたけれど、歌、演技、個性の釣り合いがこれほど絶妙なのは珍しい。(海)
Théâtre La Bruyère : 5 rue La Bruyère 9e 01.4874.7699
www.theatrelabruyere.com
3/17迄。土日15h、月20h30。 25€/32€。