フランソワ・オランド(57)が5月15 日、第5共和国7代目、ミッテランに次ぐ左派大統領に就任。オープンカーでエリゼ宮に向かう途中、大雨に遭いずぶぬれに。午後ベルリンに向かう飛行機が離陸直後、雷に打たれるという前途多難さ。
オランドは、26歳でシラク元大統領の本拠地だったコレーズ県のチュール市会議員となって以来、地元にしがみつき、ミッテランを師と仰ぎ、2008年まで11年間社会党第一書記も務めた。長年の内縁者セゴレーヌ・ロワイヤルが前大統領選候補になったことへの屈辱をかみしめながらもコレーズ県議会議長を務め続けた。党内では「軟弱」と言われようがエリゼ宮までの険しい道を歩み続けたオランドを、巨岩を山頂までもち上げていった「シーシュポス」にたとえる政治記者もいた。
彼が「ノーマルな大統領」を目指した背景には、衝動的でエゴセントリック的モーレツ大統領だったサルコジと、権力欲と性欲におぼれて失墜したストロース=カーンIMF前専務理事の2例がある。オランドは「ノーマルな大統領」として「模範的共和国」を築いていく意志が固い。
オランド大統領は就任した日に、ジャン=マルク・エロー国民議会社会党議員代表を首相に任命。若い頃、高校のドイツ語教師だったエロー新首相(62)は、堅実・誠実・冷静沈着な社会改革主義者。23年来ナント市長を務め文化・エコロジー都市として発展させた。エロー氏(ブリジット夫人も元教師)は、オランド大統領とは長年国民議会議席も隣同士、あうんの関係で「ノーマルな政治家」同士のデュオで新政権をスタート。
一方、首相の座を狙っていたマルチーヌ・オーブリ=リール市長は、「首相以外は閣僚になる意味なし」と第一書記の座に留まり、6 月10日、17日の国民議会総選挙で奮闘するそう。オランドとは性格的にも犬猿の仲のオーブリよりも真の同志、エロー氏が首相に選ばれた理由も分らないでもない。
またオランド大統領は閣僚を男女半々にするという公約を実行し、新閣僚34名のうち17名は女性、大半は30〜40代の閣僚未経験者だ。
オランド大統領が掲げた主な公約は:
●公費削減:まず前例を示すため大統領以下閣僚の報酬を30%削減(大統領 21 300 ?→14 910?)。
●欧州連合:欧州財政安定協定を見直し「経済成長協定」をメルケル独首相はじめ首脳陣に提議。
●ガソリン:高騰を抑えるために向こう3カ月価格を凍結させる(現在1㍑1.60? – 1.70? )。
●定年年齢引き下げ:サルコジ政権が決定した62歳を、18〜19歳未満で就労し41年間保険料支払い済みの被雇用者は60歳で定年となり年金を受給。
●教職員増員:前政権が 5年間で8万人削減したのに対し、小学校教職員を5年間で6万人増員。
●市議会選挙:EU圏外の外国人にも参政権付与。
●同性同士の結婚と彼らによる養子縁組を認める。
最後に大統領自身の変革として挙げられるのは、6年来のパートナー、ヴァレリー・トリエヴェラー夫人(離婚歴2回、47歳)との関係だ。彼女は元パリ・マッチ誌記者、現在テレビの政治記者で「大統領のお飾り夫人にはなりたくない」と表明。新しいタイプの大統領カップルが生まれてもいいのでは、最近の世論調査では市民の79%は二人の関係に賛成しているというし…。(君)