ベートーヴェンの交響曲は奇数番号好きな人と偶数番号好きな人に分かれる傾向がある。ボクはどちらかというと偶数で、それも4番と6番をいろいろな演奏で繰り返して聴いてきた。そしてこの新盤のとりこになってしまった。
4番は、ハイドンが発展させたスタイルの頂点に立つ交響曲だろう。低弦が動いて、神秘的なアダージョを導く。そしてティンパニーの連打とともに、朝日のように軽やかなアレグロが入り込んでくる。そして第2楽章のアダージョは、一度聴いたら忘れられない付点のリズムが繰り返され、その上を人の心を優しくするような歌が流れる。イヴァン・フィッシャーが指揮するブダペスト祝祭管弦楽団の響きは、弦楽、木管パートのよさもあってハーモニー豊かで、どこまでもしなやかに、音楽を生んでいく。そして最後のアレグロのめまぐるしい動きの楽しさ!
そして6番は、ブラームスの2番、ドヴォルザークの4番、シベリウスの6番などにつながっていく新しい交響曲の地平上にある。ここでもフィッシャーは、アルノンクールのように新しさをねらうような姿勢とは無縁、どこまでも自然にてらいなく、ベートーヴェンの楽譜に感じ入って音にしていく。ここでも木管の素晴らしさが引き立ち、第2楽章「小川のほとりの情景」のニュアンスの絶妙さ。嵐の後の「喜ばしく感謝に満ちた気分」は、遠くで響くホルンに続いて、ソロのバイオリンで始まる。オーケストラはよく鳴り響きながらも、けっして柔らかさを失わない。このアルバムで6番に出会った人は幸せ者だ。(真)
Channel Classics発売。22€。