#MeToo 運動が世界的な広がりを見せてから、早いものでもうすぐ10年。この間、世界中で先駆的な女性映画人たちの仕事が再発見・再評価されてきた。なかでもデルフィーヌ・セリッグ(1932~90)とマリア・シュナイダー(1952年〜2011)は、最も注目に値する象徴的な存在だろう。
パリ市が運営する上映施設フォーラム・デ・ジマージュは、今秋、「Sois belle et tais-toi!(美しく、黙りなさい)」と題し、二人の仕事に焦点を当てながら、「女性と映画」の関係を考察する。7週間にわたって、貴重な作品も含む映画上映に加え、映画の授業やシンポジウム、朗読会、音楽パフォーマンスなど、多彩なイベントが組み込まれた。

Copyright: Windy Production – Moana Films
9月15日(火)18hからのオープニング上映は、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映された俳優ジュディット・ゴードレッシュによる監督作『Mémoire de fille』(9月30日公開予定)。ノーベル文学賞受賞者アニー・エルノーの同名小説を原作とする話題作だ。当日はトークイベント付きで、監督やスタッフが来場予定となっている。
マリア・シュナイダー、反逆のミューズ。

9月16日(水)から20日(日)までは、俳優マリア・シュナイダーが主役。
「Maria Schneider, l’insoumuse(反逆のミューズ)」の名のもとに、ミケランジェロ・アントニオーニ『さすらいの二人』(1975)、ルネ・クレマン『危険なめぐり逢い』(1975)、ジャック・リヴェット『メリー・ゴー・ラウンド』(1981)など、出演作品を一挙上映する。ただし、最も知名度が高いベルナルド・ベルトルッチの『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)は、本人の意志を汲んでセレクションから外された。
その代わりに9月17日(木)19hからは、本作の撮影の裏側に迫るブリュノ・ニュイッテンによるドキュメンタリー『Il était une fois Le Dernier Tango à Paris』(2004)を上映し、シンポジウムも開催。

Collection Christophel © Sunchild ProductionsPhoto Moune JAMET
9月18日(金)18h30からは、「Maria Schneider, profession : passagère (『さすらいの二人』の原題とかけたタイトル)」と題し、性的なイメージに矮小化された俳優シュナイダーの肖像画を描き直す時間に。
9月20日(日)17hからは、シュナイダーの従姉妹が執筆した本『Maria』の朗読会とともに、映画における「女性のまなざし」の概念を提唱した映画研究者イリス・ブレイを迎えるシンポジウム「#METOO:70年代が女優たちにもたらしたもの」が実施される。『ラストタンゴ・イン・パリ』から時は流れ、ようやくシュナイダーの理解者ばかりの時代となった。彼女が亡くなり15年が経つが、もう少し長生きしてくれていたらと思わずにいられない。
デルフィーヌ・セリッグ、自由なアイコンの肖像
続いて、9月24日(木)から11月1日(日)までは、俳優・監督として活躍したデルフィーヌ・セリッグの特集「Delphine Seyrig, portrait d’une icône libre 自由なアイコンの肖像」へと軸足を移す。

セリッグが好んで出演した作品は、テーマも映像表現も独創的な作品ばかりだ。アラン・レネ、ジャック・ドゥミ、ルイス・ブニュエル、フランソワ・トリュフォーら、才能あふれる巨匠の作品で、優雅かつ鮮烈な印象を残した。
同時に、英国映画協会が「映画史上最高の映画」に選んだシャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(1976)を筆頭に、マルグリット・デュラス『インディア・ソング』(1975)、ウルリケ・オッティンガー『フリーク・オルランド』(1981)、リリアーヌ・ド・ケルマデック『アロイーズ』(1975)など、セリッグが時に友人として、姉御分として、女性監督たちと映画の冒険をしながら作り上げたような意欲作の数々にも出会える。
本特集のタイトル『Sois belle et tais-toi !』(1976)は、セリッグが手がけたドキュメンタリーのタイトル。「女性と映画」をテーマに語る際、必ずや立ち返るべき重要作品であり、今回は特集の柱となった。本作ではセリッグ自らインタビュアーとなり、23人の女優たちにマイクを向け、ふたつの質問(「女性でなくても俳優になっていた?」「女性同士の友好的な場面を演じたことはある?」)を投げかけている。半世紀も前に、すでに本質的な問題意識を持っていた彼女の卓識に驚かされる。

『美しく、黙りなさい』ではセリッグがマリア・シュナイダーにインタビュー。Sois belle et tais-toi © Centre audiovisuel Simone de Beauvoir
この作品にはマリア・シュナイダーも顔を出しており、自身の体験を振り返っている。当時、彼女の切実な声に耳を傾ける人が少なかった中、セリッグの存在はさぞ心強かったことだろう。本作は日本でも、この夏ようやく劇場公開され、現在話題となっている。https://moviola.jp/sbett/
セリッグに関しては9月末から6週にわたって毎週金曜18h30に、映画研究者やジャーナリストを招いて様々な切り口で授業が開かれる。他にもシンポジウムなど目白押しだが、上映イベントのプログラムは、セリッグが創設者として名を連ねるパリのシモーヌ・ド・ボーヴォワール視聴覚センターが全面協力。本センターは女性たちの権利や社会運動、芸術に関する映像の普及と保存を目指す組織で、その選択眼は最も信頼ができるものだ。
10月8日(木)と9日(金)には同センターの代表ニコル・フェルナンデス・フェレールが、セリッグとその仲間たちによるビデオ作品を紹介する。“監督”で映画を見るのがシネマテークなら、テーマ”で映画を見るのがフォーラム・デ・ジマージュ。関連作品をまとめて見ることで、より理解も深まりそうな貴重な機会だ。(瑞)


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