
1992年に映画監督デビューをし、キャリアは30年をゆうに超えるセドリック・クラピッシュ監督。最新作『La Venue de l’avenir』で、非コンペ部門だが、初めてカンヌ映画祭に公式招待された。
2025年と1895年。二つの時代を並行して語るドラマだ。現代パートはノルマンディーの古い家の相続者たちが登場する。Zoom会議の結果、代表者4人が家の調査へ。その過程で、かつてこの家に住んでいた先祖の女性に思いを巡らす。


過去パートは、恋人を置いてモンマルトルで生活を始める若い女性アデル(スザンヌ・ランドン)に焦点を当てる。彼女こそ相続者たちのご先祖さまだ。古き良きパリを舞台に、クロード・モネや写真家ナダールら、実在の芸術家がイキイキと甦る様はウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』を思わせる。
とはいえ、基本はクラピッシュの集大成的作品。家族の絆、伝統文化への愛は『おかえり、ブルゴーニュへ』、現在と過去を交錯させる大胆さは『パリの確率』などに重なる。現代社会の風刺もあるが、ユーモアの匙加減で説教臭くならない。作家映画とエンターテインメントの中間に腰を掛け、楽しそうに我が道を進み続ける。
クラピッシュはデビュー作から群像劇を得意としてきたが、今回も脚本と編集の妙でその手腕にますます磨きがかかる。ポール・キルシェ、ヴァンサン・マケーニュら今を時めく俳優と、ジヌディーヌ・スアレム、セシル・ド・フランスら常連を適材適所で配置し、時空を超え交流させた。
1895年に誕生した映画は今年で130歳。本作はさりげなく映画誕生への目配せも。その振る舞いも、カンヌが喜ぶポイントだったろう。(瑞)

