カオールは、サン・シル・ラポピーを訪れる際の「足場」程度に考えていたのだが、歩き始めて、その魅力にぐるぐる巻きにされてしまった。
U字型にうねるロット川と緑に囲まれた、半島のような町。まずはスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼路としてユネスコ世界文化遺産にも登録されている、12世紀建立のサンテティエンヌ大聖堂と14世紀に建造されたヴァラントレ橋へ。城壁の一部がそのまま川に架かっているような立派な橋は、見張りの塔が3塔あるが、これは世界でも唯一のものだという。
次に目指すは、ロット渓谷の風景を多く描いたアンリ・マルタン (1860-1943) の名を冠したカオール=アンリ・マルタン美術館。アンドレ・ブルトンが1950年に買ったサン・シル・ラポピーの家はかつて、この画家の別荘だった。やはりロット川沿いにある美しい村、ラバスティッド・デュ・ヴェールにも別荘を持ち、村の教会、橋、民家、そこに暮らす人々などを描いた作品が多数展示されている。司教館だった建物と、隣接する公園も調和がとれた、おすすめ美術館だ。
Musée Henri Martin(アンリ・マルタン美術館)
792 Rue Emile Zola, 46000 Cahors
月火休、水〜日:11h-18h。
8€/5€/18歳未満無料。
www.museehenrimartin.fr
国境なき道
カオールは「世界市民宣言」をした最初の都市で、国境なき道(サン・シル・ラポピー②の記事参照)。ヴァラントレ橋のたもとには、道標が置かれている。
Les jardins secrets de Cahors(カオールの秘密の庭)
Rue du Petit-Mot(小さな言葉通り)という小路を歩いていて、エキゾチックな美しい庭に出くわした。カオール市内には、「酩酊の庭」「魔女とドラゴンの庭」「巡礼者の庭」など〈秘密の庭〉が25ヵ所あるという。庭のネーミングにも詩情を感じた。
Rue du Petit-Mot, 46000 Cahors
Cathédrale Saint-Etienne(カオール大聖堂)
Léon Gambetta(レオン・ガンベッタ)
La Cave du Dousil(ラ・カーヴ・ドゥ・ドゥージル)
常設マルシェ近くの小路に、経営者が同じワインショップとバー・レストランが向かい合っている。ペリゴールのサラダ(鴨胸肉、砂肝、ロット渓谷の村ロカマドゥールで生産されるチーズなどがのったサラダ)を注文し、大満足!
124 rue Nationale, 46000 Cahors
www.dousil.fr
月休。火:10h-15h/17h-23h。水~金:10h-23h
土:10h-23h30。日:10h- 15h/18h-22h
Vin de Cahors AOP(原産地呼称保護 カオールのワイン)とは?
ロット川流域で、マルベック種(赤のみ)で造られるカオールのワイン(タナ種とメルロー種も配合できるが3割まで)。「黒ワイン」とも呼ばれる濃厚な色のワインは、なんといっても鴨料理ややはりこの地方特産のトリュフと合う。ロット川を利用したワインの商いが1世紀ころから盛んだったが、生産が本格化されたのは中世。マルベック品種は16世紀に導入された。
Les Petits Producteurs(「小規模生産者」という名のバー)
ロット川と大聖堂の中間にあるワインバーは、カオールワインの12軒の小規模生産者のものを扱う。鴨の加工品も土産に買え、テラスで昼食も可能(閉店19h)。
4 Pl. Champollion, 46000 Cahors
月〜土:9h30-19h、日:10h-15h。
www.lespetitsproducteurs.fr
Le Bistrot des Halles(デ・アルのビストロ)
大聖堂前の広場には毎水・土とマルシェが立つ。しかしそれを逸しても常設マルシェがある。一角のビストロでは、カウンターかテラスで食事やつまみを食べられる。鴨の心臓と豚足入りコロッケをつまみにカオールワイン。この旅最高のおつまみタイムだった。
La Halle de Cahors:Place Galdemar, 46000 Cahors
月休、火〜土:8h-19h、日:8h-14h。
Hôtel Terminus(ホテル・テルミニュス)
1911年創業。家族経営で7代目が継いでいる品のよいホテル (部屋65€-)。レストラン(メニュー24€-)もバー、テラスもあり。カオール駅から280mと、電車での旅には理想的。
5 av. Charles de Freycinet, 46000 Cahors
Tél:05.6553.3200
www.terminus-1911.fr
◉パリからの行き方
パリ・モンパルナス駅およびパリ・オーステルリッツ駅からカオール駅まで約5時間半。
・電車 フランス国鉄SNCF 電車時刻と予約
《前回掲載の記事もチェック!》
サン・シル・ラポピー①
「ロット渓谷の真珠」
サン・シル・ラポピー②
アンドレ・ブルトンの家 ー シュルレアリスムを今に生きる運動に。