2024年7月26日、100年ぶりの夏季パリ・オリンピックは賛否両論を巻き起こした開会式で幕開けた。5月8日からフランス全土をリレーされ続けた聖火はこの式典の間も受け継がれたが、ゴールとなる聖火台の場所は知らされていなかった。だから、ライブで見ている観客は、場所を予想しながら見る楽しみがあった。
この日、聖火はセーヌ川を走り、チュイルリー公園へと運ばれ、車椅子に座った1924年生まれの元自転車競技の金メダリスト、シャルル・コストの手へ。そしてコスト氏から、最後に炎を受け継いだ陸上のマリー=ジョゼ・ペレクと柔道のテディ・リネールが聖火台 La Vasque に点火した。
聖火を見に行こう
この聖火台が、オリンピック開催期間中、午前11時から午後19時まで、毎日約1万人が無料で見学できるようになっている。日時指定の見学券を事前にネットで申し込むシステムだ。(申し込み☞ https://lavasque.paris2024.org/?lang=2) 場所はチュイルリー公園の丸噴水。 だが、入口はルーヴル美術館のピラミッド向かいにあるカルーゼルの凱旋門を抜けた先にあり、QRコードのチケットでアクセスができる。
ただし、チケットがなくても、遠目から見ることも可能。また、日没から深夜2時頃まで、気球は60メートル上空まで上昇するため、より遠方から見えやすいだろう。
聖火台は気球になっている。直径約 7メートルの炎のリングを土台に持ち、高さ30メートル。メダルをイメージした金・銀・銅のメタリックカラー。シンプルで洗練されたデザインは、聖火トーチと同じくフランス人マチュー・ルアヌールによるもの。気球型が選ばれたのは、フランス史への目配せがある。
まず、熱気球は1783年に有人飛行を成功させたフランス人モンゴルフィエ(モンゴルフィエール)兄弟による発明品。フランス語話者ならば、気球のフランス語「Montgolfière」で、すぐにピンとくる名前だろう。そしてモンゴルフィエ兄弟の発明と同じ年、やはりフランス人物理学者のジャック・シャルルとマリー=ノエル・ロベールは、40万人もの観衆が見守る中で、水素ガスによる飛行を成功させた。その場所こそ、ちょうどこのチュイルリー公園。そして時は流れ、今回登場した21世紀の聖火台は、オリンピック史上初めて、化石燃料に頼らない、100% 再生可能の電力を使った炎なのだ。
周りにいるフランス人に感想を聞いてみる。「この聖火台は天才的!個性的で、かつフランス的。知っているかい? 気球はフランス人の発明なんですよ」とアランさん。雨の中の開会式にも足を運んだそうで、オリンピックを家族で積極的に楽しんでいる様子が伺えた。
息子さんふたりと見にきたのはデルフィーヌさん。「素晴らしいアイデアです。気球は発明の遺産ですが、同時に水と電気を使った新しいタイプの気球。つまり、古いものと新しいものの融合ですね。息子に見せられて本当に良かったです」と、やはりご満悦で、その息子くんもやはり「Belle(美しい)!」との答え。
青空を背景に浮かぶ聖火台は、どこか優雅さも漂う。また裏側に回ると、水がミストとなって流れてきて、この暑さにはちょうど気持ちが良い。実は炎と言っても、これは電気による光と水でできた偽物の炎。聖火台を囲むリングには40台のプロジェクターが組み込まれ、水蒸気を炎風に演出しているのだった。そして、本当の聖火はというと、聖火台の手前に置かれたガラスケースに納められたランタンで燃え続けていた。しかし聖火台のインパクトで、気づかずに通り過ぎている人も多かった。
聖火台の見学チケットは7月29日の段階で、10万枚の無料鑑賞券はすぐに予約済みに。ただし、追加も見込まれているので、希望者は諦めずにサイトをのぞいてほしい。(朝9h頃に追加の噂も)また、デザイナーのルアヌールとパリのイダルゴ市長は、この気球聖火台をオリンピック後も保存したいと希望している。年間約1400 万人が訪れるチュイルリー公園に浮かぶ、パリの新しい名所となる日も近いかもしれない。
Jardin des Tuileries
Adresse : jardin des tuileries, 75001 Paris , Franceアクセス : Tuileries / Palais Royal - Musée du Louvre
URL : https://lavasque.paris2024.org/?lang=2