Napoléon vu par Abel Gance
かつてこれほどの手間と時間、お金をかけ修復された映画はあっただろうか。今年のカンヌ映画祭クラシック部門で上映された、サイレント期の巨匠アベル・ガンスの超大作『ナポレオン』(1927)のことである。400万ユーロ(約6億8500万円)と15年をかけ97年ぶりに蘇ったのは、監督が「グランド・バージョン」と呼んだこの7時間版だ。
ナポレオンといえば最近リドリー・スコット監督も題材にしたばかり。英国人監督だからか、くたびれたアンチヒーロー的人物造形には悪意を感じなくもなかった。翻ってフランス人のガンスはあくまでナポレオンの味方。少年期からイタリア遠征までの若き時代を、共感と憧憬を込めて描く。主演のアルベール・デュードネは影のあるカリスマティックな英雄を熱演。ハマり役過ぎて生涯ナポレオンの影響を受け続けたとの逸話も残る。
馬などを駆使した移動撮影、モノクロ時代の着色化、3台のカメラで撮影の巨大三面スクリーン上映……。本作は映画の可能性を押し広げた野心的な作品。先駆的な映像表現の数々に驚かされる。かつて配給権をクロード・ルルーシュから買い取ったフランシス・フォード・コッポラは、1981年にニューヨークで4時間版の上映会を実施し成功させた。後世の監督に刺激を与え続ける作品なのだろう。
さて、今月フランスでは満を持してスクリーンで見られるチャンスが到来。7月4・5日にはラ・セーヌ・ミュージカルでオーケストラ演奏付き上映が。続いて7月6日から21日まではパリ・シネマテークで上映会。同時期にパテの配給で劇場公開も。さらに近い将来フランス国営TV局*、そして修復作業のメセナであるネットフリックスでも配信予定だ。(瑞)
*France 5(国営放送)では9月8日(21h)から放送予定。
その後、30日間、こちらのページにて視聴可能。