仏領ニューカレドニア(仏名ヌーヴェル・カレドニー)の首府ヌメアを中心に5月13日から暴動が続いた問題で、マクロン大統領は23日に同地を緊急訪問して事態の沈静化を訴えた。
同地では選挙権関係の法改正をきっかけに独立派の暴動が起きた。約400軒の商店や工場が放火で焼失し、ヌメアと周辺の道路は封鎖によって分断され経済は麻痺、食料や生活必需品の供給にも支障が出ている。15日に発布された非常事態宣言は28日に解除されたが夜間外出禁止は続く。暴徒と警察の衝突で憲兵2人を含む計7人が死亡。本土から千人の増援が派遣され、治安要員は約3千人に膨らんだ。トントゥータ国際空港は14日以来閉鎖されており、観光客はヌメアのマジャンタ飛行場から軍用機で豪などを経由して帰国している。
暴動のきっかけは、ニューカレドニア住民の選挙権の改正案だ。1980年代に独立を巡って内戦状態に陥った後、独立派、仏残留派、政府の間で結ばれたヌメア協定(98年)で、ニューカレドニア議会選と住民投票の選挙権を、同協定前に10年以上同地に居住していた人および子孫に限定する規定ができた。それを、現在居住10年以上の人すべてに拡大する憲法改正案が国民議会に提出され、5月15日に与党と右派、極右の賛成351票、左派諸党の反対153票で可決された。上院では可決済みのため、6月末に憲法改正に必要な両院合同議会を招集して採決する予定だった。仏植民地化以前の先住民、カナック人の割合が1950年代には50%以上だったのが、70年代からはニッケル採掘のため同地移住を促進したフランスをはじめとする欧州系やアジア系住民が増え、カナック人は約41%に低下。社会主義カナック解放戦線(FLNKS)など独立派は、選挙権規定改定は非カナックの有権者を増やしカナックの声が反映されにくくなると反対し法案撤廃を求めていた。そこに低社会階層のカナックの不満も加わって道路封鎖や暴動、略奪に発展した。
マクロン大統領は今回の訪問で仏残留派、独立派らすべての関係者と協議。選挙法改正案を強硬に採決しないと約束し、6月末頃までに各派が対話を再開して民族自決に関する何らかの合意に至り、その合意を住民投票にかけたい意向を示した。また、暴動で被害を受けた経済界には無利子の融資や連帯基金を利用できるようにすると約束。しかし、2021年に独立の是非を問う住民投票を独立派がボイコットして以来、話合いは進展していない。対話の実現に期待したいところだ。(し)